【まとめ】 2016年にマジック業界で起こった12のコト


1. 書籍

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今年は「Card Fictions」で有名なピット・ハートリング(Pit Hartling)が数年ぶりに本を出し、話題となった。(早くも2017年に邦訳発売予定とされている)

8月にはHermetic Pressのホームページが突然閉鎖するという騒ぎがあったものの、Penguin Magicとの合併などにより、新たな企画が進行中との声明を発表。その言葉どおり、11月には新作となる「The Aretalogy of Vanni Bossi」が発売された。内容の秀逸さもさることながら、作者のVanni Bossiが誰なのかも注目の的に。

11月下旬には謎のブロガーAndyによる「The Jerx Volume One」が発売されるやいなや、Geniiで高評価を受け、300ドルと高額ながら、今年の「The Magic Cafe」のブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれそうな人気ぶりをみせている。

このほか、同月には佐藤総の「トランプと悪知恵」が英訳されたり、「エキスパート・アット・ザ・カード・テーブル」(Expert at the Card Table)の作者S.W. アードネスの正体に迫る「The Hunt For Erdnase: and the Path to Edward Gallaway」が出るなどし、2016年の上半期は話題が絶えない日が続いた。

2. 映画

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映画「グランドイリュージョン」の続編の公開されるも、その人気ぶりは健在のようで、既に第3弾の製作が決定。また、中国での成功を受けて、中国版のスピンオフ企画も進行中とのこと。なお、2017年1月11日にDVD&ブルーレイの発売が決定している。

3. ハリー・フーディーニ

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今年はある意味、フーディーニの年だったといえる。今年の10月31日にフーディーニの没後90周年を迎えたのを皮切りに、翌月の11月6日に彼の有名な脱出マジック「Straitjacket Escape」の誕生から100年が経ったことが伝えられた。

このほか、ハリー・フーディーニを基にした映画が進行中と伝えられたり、ドラマの世界では、ハリー・フーディーニとコナン・ドイルのタッグを描いたドラマが放送された。きわめつけは、フーディーニの故郷であるハンガリーのブタペストで今年「The House of Houdini」という博物館が新設されたのも話題となった。

4. 日本のマジック番組

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数々の種明かしをしてきたテレビ番組「トリックハンター」が今年8月、ついに終了した。これまでトランプや日用品を使ったマジックが種明かしされる分には別にどうでもいいと思っていたが、ステージマジックがあれだけ軽く扱われるのを見て、つい可哀相に思ったのを今でも覚えている。
このほか、地上波では、大型マジック番組「キングオブマジック」が放送されたが、相変わらず日本のマジックの軽い扱われ方には見る気が失せた。これについては、下記のブログが鋭い分析が行われている。
「キングオブマジック、ヤラセと言われても仕方ない」

5. 海外のマジック番組

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アメリカのマジック番組「Penn & Teller: Fool Us」は毎週様々なマジシャンが登場し、ペン&テラーの前に秘密を見破られずにマジックができたら(彼らを引っかけることができたら)、勝ちという番組構成。毎回多種多様なマジシャンたちが登場し、「こんな人がいるんだ!」と驚きが絶えない。また、6月に行われた人気マジシャンランキングでは、カナダのマジシャン、シン・リム(Shin Lim)が1位に選ばれている。なお、視聴率競争が激しい中、新シーズンの更新を果たし、次でシーズン4を迎える。

特に今年はダレン・ブラウンをプロデューサーの一人に迎えたとされる新番組「The Next Great Magician」やオーディション番組「American’s Got Talent」で毎年のようにマジシャンの出演が絶えないなど、1つの番組にたくさんのマジシャンが登場する構成が多い印象を受けた。

6. 訃報ニュース

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2016年の多くのマジシャンたちが亡くなった。【2016年の訃報まとめ】を読んだ方は、「今年は厄年だったのでは?」と思うかもしれないが、調べたところによると、年間20人程度の訃報ニュースは平年並みのようだ。

7. 新サービス

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今年はマジック界で2つの新サービスが大きな話題を呼んだ。

1つ目はマジッククリエイターの野島伸幸が毎週新作を配信する「週刊マジオン」だ。このサービスは月々2000円支払うことで、毎週野島オリジナルの新作マジックを動画形式で視聴することができる。

2つ目は4月から始まったマジックランドによる新コンテンツ「Speakers」だ。これは日本のマジック界の業界人たちにインタビューし、その模様を無料で公開したもの。プロとして日本のマジック業界をどう見守ってきたのかやなかなか聞けない経験則など様々なテーマが混在している。(ただし、動画でなければ伝わらないボディランゲージや画像を多用しているわけでもないのに、なぜ動画にこだわるのかはなはだ疑問を感じる構成だ。しかも、3人目の君島孝司の動画では、背景音が邪魔で仕方がない)

8. Magic Magazine 廃刊

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25年続いたマジック雑誌「Magic Magazine」が廃刊を迎えた。後に2年間限定の「MAGIC Legacy」にリニューアルすることが発表されたが、予約数が目標を超えなかったためか、9月にキャンセルとなった。これまで4401個の商品レビューに2364のトリックを取り上げ、延べ300号、合計3万1356ページもの壮大な歴史に幕が下りた。12月には最終号となる301号が出版された。

マジック雑誌の廃刊といえば、パフォーマーのための雑誌を謳った「パフォマガ」も今年廃刊したようだ。何の告知もなく、次号の発売は数ヶ月遅延し、ツイッターも既に削除されている。つまりはたった3号での廃刊となったようだ。そりゃあ、マジシャンだけでなくパフォーマーにターゲット層を広げておきながら、あの内容の薄さにあの値段となっては誰も買う気がしないのは当然だろう。

9. デビッド・カッパーフィールド

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今年はパフォーマンスとは関係ない場所で、デビッド・カッパーフィールドの名前を聞くことが多かった。例えば、経済誌「フォーブス」がマジシャンの年収ランキングを公表し、案の定カッパーフィールドが躍り出るも、その後に別の経済誌が概算した結果と食い違う結果に発展。「カッパーフィールドVSクリス・エンジェル」と題した記事が各メディアサイトで横行した。それから数ヶ月後、クリス・エンジェルがカッパーフィールドのツイッターのフォロワー大量購入を指摘し、再び2人の闘いを焦点に当てた記事が出回ることとなった。

嬉しいことに、こうしたマジック業界の暗部を突きつけるかのような話題以外に、彼はマジック業界にとって革新的な話題をもたらした。

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3月14日、マジックを「芸術」として認める法案「HR642」がアメリカの下院委員会を通過したのだ。かねてから彼は国にマジックを芸術と認める運動を続けてきた。映画や音楽、文学のようにマジックも同じ娯楽であり、アートのいち形態であることを訴えてきた。そこで、彼はテキサス州ワイリー市の市長であり、S. A. M. メンバーのエリック・ホーグ(Eric Hogue)に協力を仰ぎ、このたび「HR642」が下院委員会を通過した。この後、上院委員会を経て、大統領に署名をもらえれば、晴れてアメリカのマジックは「芸術」として認めれられることになる。

もしマジックが「希少価値のある芸術」として認められれば、国は積極的にマジックの知的財産権を保存、保護に努めることになる。付け加えていえば、カッパーフィールドが立ち上げた子供たちにマジックを見せる慈善団体「Project Magic」などに国が助成金を出すといった措置が受けられる。

なお、この決議案「HR642」はカッパーフィールドのほかにデビッド・ブレインやブライアン・ブラッシュウッド、スティーブ・コーエンなどの有名マジシャンたちが公に支持を表明している。また、既に世界中にいる1000人を超える人々が申立書に署名し、専用サイト「MAGIC IS ART」では、ネット送信で署名運動に参加することができる。

10. ギネス記録

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今年はやけにマジックの世界記録更新が続いた。「スカイダイビング中にいくつマジックができるか」とか「1分間に何回早着替えイリュージョンができるか」、これ以外に2つほどある。世の中にはいろんな世界記録があるが、マジックならば、どんなにくだらなくともメディアがこぞって取り上げてくれるのでは?と疑ってしまうほど「マジック」というジャンルには新奇性がついてまわるかのような印象を受けた。

ギネス記録という名の途方もない挑戦に関連して、日本では野島伸幸が1日に94個のマジックづくりに挑戦する企画「野島チャレンジ」を行った。

1. SNS

今年、SNSを通じて話題になったマジック関連の話題を以下に列挙する。

▼ 喫煙所にいた謎のおじさんに注目が集まる

▼ スーパーの店員がカニを浮かせる

実はこれ鳥取県が特産品のカニをアピールするために製作されたジョーク動画。

 

お笑い芸人のタイムマシーン3号が披露したネタがほとんど手品と話題に!

ネタの名前は「かつあげ」といい、その後にMr. マリックとコラボした際にも同様のネタを披露している。

▼ ポーランドの朝の番組でマジシャンが失敗し、出演者が怪我をする

これまでにもマジシャンが失敗することがあったが、観客に怪我をさせたのはほぼ皆無といっていいだろう。しかも、その模様が生放送で放映されたのは初ではないだろうか。

12. 時事問題

マジック業界と世間の時事問題が関連することなど、あまりなさそうだが、今年は違った。

▼ 11月8日:アメリカ大統領選挙にて、ドナルド・トランプ 勝利

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マジック業界では、よく流行語から引っ張ったギャグネタなるものがあるが、トランプ大統領の誕生により、マジック業界に新たに1ネタ加わった。しかも、流行語のような期間限定の代物というわけでもない。任期中最低4年間は行使し続けることができる。

▼ 12月2日:カジノ法案 衆院内閣委員会を通過

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もしカジノが日本にできた場合、カジノで普段から行われているゲームがある一定の層において、ポピュラーなゲームとして浸透する可能性がある。カードマジックの一分野でもあるギャンブル・デモンストレーションをそのまま運用することができるということになるのではないだろうか。もちろん、浸透には時間がかかるが、良いきっかけであることは変わりない。それに、トランプを触った経験というと、大概学生時代を最後におもちゃ箱になる(これは言い過ぎかな)。だが、カジノがあったら、大人向けゲームとして、よりトランプを身近な存在として勝率することはできるのではないか・・・。

新たな市場の開拓という意味では、マジック業界にとっては朗報といえるだろう。