持ちネタを全て使い果たした際に役立つ5つの対処法


よくレパートリーは3~4つくらいでいいとされるが、本当に持ちネタを全て使い切ってしまった場合、マジシャンとしてどんなことができるのだろう。この問題に対し、マジシャンのドミニク・レイエスでおなじみの「Merchant of Magic」において、次のような5つの対処法を紹介している。

Running out of Magic Tricks | Merchant of Magic
http://blog.magicshop.co.uk/2014/06/running-out-of-magic-tricks.html

持ちネタを使い果たしてしまうことは誰にでも起きうることだと思う。

・イベントにゲストが数人しかいなかったとき

・調子に乗って、持ちネタを大量放出してしまったとき

・リピーターがいたため、持ちネタが想定よりも限られてしまったとき

・会場が狭く、グループ全体にマジックを披露しなくてはならなかったとき

・長時間拘束されてしまったとき など…

状況は様々考えられるが、「持ちネタを全て」というよりも「この場で使える持ちネタを全て」といった方がプロやアマを問わず、受け入れられる問題ではないだろうか。

1:応用可能性の高い道具を用意しておくこと
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多種多様なマジックを行うためには、それに見合った多く小道具になってくる。以下では、マジックを使い切った時のために役立つ、5つのマジック道具を紹介したい。

ループス(Loops):言わずと知れたインビジブルスレッド。手を触れずにメガネやフォークを動かしたり、ホーンテッドデック、インビジブルタッチなど現象としての応用可能性が高い

サムチップ(Thumbtips):シルクやコインなどの小物を自在に消したり、出現させたりすることができるギミック

スベンガリデック(Svengali Deck):アンビシャスカードやカードを簡単にフォースできたりするトリックデック

このほか、「M5 System」や「Coin Unique」などのギミックがこれに該当する。

2:巧みなフォールスシャッフル
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トランプは素晴らしいマジック道具だ。いくつものライフタイムを学ぶよりもトランプを使うことで、より多くのマジックに触れることができる。単純なカードロケーションやフォース、カラーチャンジなどの技法は、それ単体でも十分に効果的だ。特にフォールスシャッフルやフォールスカットはギャンブル・デモンストレーションに結び付けたりとそれだけでドラマチックに演出することができる。マジシャンとして慣れ親しんだマジック道具と最も基本的なテクニックさえ揃えば、即席のマジックをいくらだって演じることはできる。

3:マジックを教える
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すべてのマジシャンは簡単なマジックならば、教えることができるはずだ。ほとんどのマジシャンはマジックのタネを明かすことに抵抗があるかもしれませんが、モノによって楽しませることができる。この世にはパブリックドメインともいえる簡単な手品やパズルがたくさんある。また、マジックを教えることは、マジックを見せるのと同じくらいプレゼンテーションに気を配る必要がある。特にパズル系ならば、マジックの本当の秘密を明かす必要がないため、そういう意味では、良いトリックともいえる。

次の動画では、一般人でも簡単に学べて、かつ劇的なクライマックスで楽しませられるマジックが解説されている。

4:バーベット

バーベット(Bar Bet)とは、一見単純そうな問題を出して、それができるかどうかを賭ける(例:1ドル)というゲームをいう。ほとんどがバーなどの飲み屋で行うことを前提としているため、使われるものもコップやマッチなど特別な道具を使わないのが特徴。日本でいうところのIQサプリといえば、想像がつくだろうか。

例えば、2つのプラスチック製のコップがあったとする。数本のマッチ棒をテーブルに置いて、2つのコップには一切触れずに真ん中にコップを置けるかどうかを賭けさせる。
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一見、不可能なように思えるが、使うのはなんとマッチ棒ではなく、この賭けに使う紙幣。つまり、タイム・ミスディレクションが鍵だ。紙幣を横にして山折りと谷折りを交互に行う。

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こんな感じ。

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あとは、2つのコップを柱に見立てて、そのまま乗っければ、出来上がり!

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バーベットの多くは科学を応用することもあり、それだけで不思議な現象としてドレスアップことができる。既にいくつかの作品を知っているかもしれないが、年々新しいモノを増やしていくべきだ。そして、事前に5つ前後のバーベットが書かれたメモをクロースアップケースやウォレットに入れておけば、いずれ保険として活用することができる。

なお、上記の例はリチャード・ワイズマン博士のYouTubeチャンネル「Quirkology」の「10 Amazing Bets You Will Always Win (7)」の中で公開されている。このほかにも、ワイズマンは延べ100近いバーベットトリックが公開しており、その中から自分なりのリストを構築していってもいいだろう。

5:マジックの小話
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私の経験上、特に「どうやってマジシャンになったのか?」という話はよく聞かれる。このほか、自国のマジックの歴史に関する興味深い話を掘り下げるのもいい。マジックを行わずにちょっとした小話で人々の心を開かせることができるようになれば、よりリピーターを確保することができるようになる。中には、こうしたマジック関連の話を永遠と聞いていたいと思う人もおり、それだけで数分、時間を稼ぐことができる。

付け加えれば、「トランプの組み合わせ」や「5番目のマーク」といった知られざるトランプにまつわる話はもちろんのこと、「マジックに著作権はあるのか?」といった話も一般人にとっては興味を引くネタの1つといえるだろう。