マジックやメンタリズムをテーマにした海外ドラマ5選&その他4つの厳選エピソード


私は海外ドラマが大好きだ。それも、マジック以上に。

これまで事件モノ、SF、恋愛、コメディ、アクションなど、かれこれ10年近く見てきた。

マジックの世界に足を踏み入れてから、今年でようやく3年目といったところだが、今思い返してみると、海外ドラマの中でマジックやメンタリズムをテーマにしたエピソードというのはこれまで何度も目にしていたことに気づいた。

特に事件モノに関しては、シーズンを重ねるごとに、色々なネタをエピソードに組み込んでいくためか、マジックという至高のパズルが入ってくるのもごく自然なことではあるのだろう。

そこで、今回は2017年2月末時点で、マジックやメンタリズム等をテーマとした海外ドラマのいちエピソードを厳選してみた。なお、以下のエピソードリストはドラマを途中から見ても、十分面白いし、手軽にレンタルできるタイトルから選出するものとする。

1. CSI:科学捜査班 シーズン13 第16話「ポーカーフェイス」

科学捜査班(日本でいう鑑識)をスポットを当てたロングランシリーズ。

事件はなんとエレベーターの中で起こった密室殺人。犯人もいなければ、凶器もない。そんな状況でエレベーターに乗って10秒以内に人を殺し、エレベーターから脱出することは果たして可能なのか?というストーリー。

本エピソードでは、密室事件以外にいくつかの事件が並行して進んでいくのだが、マジック(テーマそのものはポーカー)に関連するのはもちろん密室事件の方。でも、(これだけでも既にネタバレだが)実際にはこれらの事件は関連していたりするからおもしろい。

2. CSI:NY シーズン3 第18話「死への誘い」

CSIシリーズには3つのスピンオフがあり、こちらは2つ目のニューヨークを舞台にした話。
本エピソードでは、あのクリス・エンジェルがイリュージョニスト役でゲスト出演。芸風もあまり手を加えられていないのもいい。(最初見たときはマジックについて何も知らなかったから気づかなかったけど、やけにマジシャン役が板についた俳優だなという記憶だけは残ってた。後にクリスの経歴を読んでて、「CSI:NY」に出演経験ありっていうのを目にした瞬間、「もしかしてあのエピソードかな」っとすぐに思い返せるほど。吹き替えで聞いたせいかな)

事件はイリュージョニストのルーク・ブレイドが3夜連続公演を行うところから始まる。第1夜は人体切断マジック。ところが、別の劇場でショーと同じように胴体が切断された女性の遺体が見つかる。その後もショーを模倣した事件は続き…というストーリー。

シリーズ系のドラマによくあるように少々サブスーリーが入ってくるが、これだけ見ても面白いと思う。(思い返してみると、他のシーズンと比較して、シーズン3では、最も傑作エピソードが多かった印象)

ちなみに、CSIシリーズでは、捜査官たちのブラックジョークが散見されるところがあるが、CSI:NYでは、正義感を振りかざし誠実に仕事に向き合っているような顔をしておいて、しれっとジョークをかますのが面白い。それこそ「仕事楽しみすぎだろ!」と突っ込みを入れてしまいたくなるぐらいに。

3. レバレッジ シーズン2 第13話「神からのギフト」

映画「オーシャンズ11」が好きな人はこのドラマもきっと好きになる。「オーシャンズ11」では、最初に見る人にもどのようにして悪者から大金を巻き上げるかをわかりやすく教えてくれる。しかし、最終的には悪者も見てる人も騙くらかし、「実は裏でこんなことやってたんだよ」という構成がある意味爽快で、それが人気の秘密ともいえる。

そして、レバレッジでは、オーシャンズシリーズと同じ構成で、それを45分で見せてくれる。主人公たちは元々プロの犯罪者たちで、それぞれが何かしらのエキスパート。第1話の仕事以降、チームで活動することに大きな意義を見出し、そこから弱者から金を巻き上げる悪の権力者たちに狙いを定め、義賊的活動を行うというストーリー。

こう説明すると、なんだか日本でも似たようなドラマがあったようにも思えるが、実際に映像で見ると、ユーモアあり、知的エンターテイメントありなど、かなり楽しめる。

本エピソードでは、死んだ夫の保険金や家を奪おうとするニセ霊能者の話から始まる。どのようにしてニセ霊能者が本人しか知らないはずの情報を読み取ったのかが解説される。もちろん、そこにはホット・リーディングありきではあるものの、コールド・リーディングについても、踏み込んで明かされているから面白い。

そんな中、ニセ霊能者の前に、主人公たちはなぜかもう1人のニセ霊能者を送り込み…。果たして、彼らはいかにしてターゲットをはめるのか?

4. レバレッジ シーズン3 第2話「同窓会のワナ」

一流の詐欺師をコンセプトにしたドラマというのは往々にしてマジックやメンタリズムに大いに親和性があるものだ。レバレッジでも時折、NLP(神経言語プログラミング)という言葉が登場したりする。

特に本エピソードでは、それがフルに活かされる。話はIT業界の大物からデータを盗み出すところから始まる。ところが、IT業界のトップながら重要なデータは80年代の古いパソコンの中に保存されていて、現代のパソコンではハッキングできないことが判明。そんな中、主人公たちはいかにしてターゲットのPCを「ハッキングする」のかというストーリー。

エピソード単体でいえば、これくらいかな。テーマ云々を抜きして、どのドラマも一から見ても普通に面白いんだけどね。

さて、ここからは個人的にメンタル好きの人はぜひ見てみてほしいと思う海外ドラマを紹介していきたい。

まず、よく「メンタリズムの勉強に役立つドラマ」みたいな形で紹介される代表的な3大タイトルについて。(こういう文面を見るたびに「クソ野郎が!失せろ」と思ってしまう自分がいるが、ここでは少し置いといて…)

1. THE MENTALIST/メンタリスト

一言でいうと、このドラマの主人公パトリック・ジェーンはまさに理想のメンタリスト像を体現していると思う。しかも、心惹かれるキャラクター像に加え、主演を務めるサイモン・ベイカーはそれこそハマリ役!ストーリーも彼の知性やスキルをいかんなく発揮するために細部に至るまで作り込まれているもまた圧巻だ。

ジャンルとしては、よくあるフーダニットもの(=犯人は誰か?)でありながら、登場人物たちの微妙な表情の作り方がなんとも秀逸で、そこもまたスゴイ。

ただし、ちょっぴり残念というべきか、本作ではメンタリストとしてのスキルの全てが明かされるというわけではない。どういうことかというと、例えば詐欺師系のドラマでは、ラストに本当はどういう計画で、いつからそう考えていたのかなど、番組内でその全てをタネ明かししてくれるのが常だ。

だが、こと「THE MENTALIST/メンタリスト」においては、なぜそういう性格だとわかったのか、なぜジェーンはそんな質問をしたのか、なぜ相手が考えたことを当てられたのか、必ずしも全部は教えてくれない。一見、製作サイドはそうした部分を特に考えていないかのように解釈できるが、実際は細部にまで目を配っているから恐ろしい。もちろん、大概はジェーンの口から教えてくれるし、場合によっては、カメラワークからそのことを視聴者に察するよう仕向けたりもする。

作り込まれたフーダニットものの件と考え合わせると、きっと何度も繰り返し見る人用に、敢えてそうした疑問を残しているのではないかと思う。私自身、ドラマを幾度となく見返したり、心理学関連の本を読み漁っているうちにおのずと気づかされた経験が何度もある。

こうやって考えてみると、放送当時、本国の録画視聴率の規模が群を抜いていたのも頷けるかもしれない。

全7シーズンあるうち、私が特に好きなエピソードはジェーンがサイキックとして活動していた頃に関連する話全部がそう。(シーズン1~5までなら、大概どれも良いんだけどね)

とはいえ、よくありがちなメンタリズムの勉強という観点では、どうかと思う。知っている人が見たら、そりゃあ面白いのも無理ない。でも、何も知らない初心者が「勉強」と銘打って見るのはいささかハードルが高い(私自身、同ドラマを通じて「メンタリスト」という言葉を初めて知り、それがある意味きっかけでもあったのだけれど、これを教材として足を踏み入れようとすると、「ギミックなんてクソ。メンタリストたるもの頭を使うべき」などというこじらせ方をするので注意してほしい)。

それにジェーンのキャラクターを実際の演技に組み込もうなんて現実的なじゃない。ジェーンだって演技するときはいつもの子供っぽさを抑えて、なんともいえないサイキックっぽさを演出してるしね(笑)

ちなみに、実のところ、「メンタリスト」という言葉はドラマの中ではほとんど登場しない。セリフとして初めて登場したのだって、なんとシーズン4!それどこか、おそらくあれが最初で最後だったんじゃないかな。

2. ライ・トゥ・ミー

実在の心理学者にして、微表情学の第一人者であるポール・エクマンをモデルにしたドラマシリーズ。

彼の本も日本語で色々出ていて、表情を読むというリーディングものの教材としては、まさにバイブル(特に「表情分析入門」)。

私もリーディングを勉強するのに同ドラマを一体何度見返したことか。万人に共通する7つの表情(それ以外も含む)について映像で説明してくれるので、その後にエクマンの本を読むと、まるで先行オーガナイザーかのごとく、より一層理解しやすくなる。もちろん、彼の本にも写真付き解説しているが、動画説明に勝るものはないだろう。

シーズン1を一気見した後に、それまで気づきもしなかった相手の表情に自然と目が行くようになったり、自分が特定の感情を喚起した時、それに付随する表情がよりはっきりと出るようになったり(以前よりも自分の表情に気を配るようになったせいかも?)などその後の変化については、今でもよく覚えている。とにかく、あれは実に強烈だった。

本作では、45分の中で、2つの事件が同時進行で描かれ、必ずしも殺人モノというわけではない。そういう意味では、気軽に見れるし、感情心理学の解説やボディランゲージに関する説明までしてくれて、かなりオススメ。

しかしながら、元々本作はシーズン1しか作られる予定ではなかったのだが、予想よりも高い視聴率を獲得したため、急遽シーズン2の製作が決定。それゆえか、ドラマの質はガタっと落ち、それを巻き返すためにシーズン3まで製作されたが、そこでも失敗は続き、最終回も作られずに打ち切りとなった。私もそれを知ってて、あえて(主人公を演じるティム・ロスが好きで)最後まで見たが、教材として見るつもりなら、シーズン1だけで十分だ。というか、普通に海外ドラマ好きの方もまた同上。

(実は、エクマンの本はあまり読んでいない。色々と遠回りをしすぎて「今更読むの?」って感じがある。私の場合、今はなきFOXのエピソードごとに詳細に説明してくれた解説ページと実践が大部分を築いてくれた。…あの頃はまだ高校生だったから3000円の本を買う気になれなかったってもあるけど)

3. SHERLOCK/シャーロック

名探偵シャーロック・ホームズを現代に復活させた1話90分構成のドラマシリーズ。

メンタリズム云々で取り上げられる理由はやはり彼の秀でた観察力に関するシーンなのだろう。確かに、このドラマは、「観察するとは何か」を教えてくれる至高の知的エンターテイメントであることは間違いない。だが、2017年2月末時点で、まだ10話までしか製作されていないのが難点だ。それに教材という意味では、相手を見抜く観察部分のシーンは言うほど多くないし(洗練されてるけど)、話数を含めて考えると、どこか物足りない。

そこで、個人的に薦めたいのが次のドラマ…

4. エレメンタリー

こちらもシャーロック・ホームズを現代に移し替えたドラマシリーズ。

「SHERLOCK/シャーロック」と打って変わって、1シーズンに22話もあり、現在シーズン3まで発売&レンタルされている。

本作では、舞台をニューヨークにしたり、ワトソンを女性にしたりと様々なアレンジが加えられ、ホームズ好きの私でさえ、最初は「えー(嫌悪の眼差し)」と思ったが、実際見てみたら、もう最高!(笑)

「THE MENTALIST/メンタリスト」のように相手の現在や過去を言い当てることはもちろんのこと、なぜそういった推論に至ったのかも教えてくれるし、一部原作を踏襲していながら、シャーロキアンをも騙すアレンジの仕方には驚いた(そういう解釈もいいですね!と)。

それに、シャーロック・ホームズの人物像への解釈に関しては、私の理想そのまま!(ちょっと投影も入ってるかな笑)
マリア・コニコヴァの「シャーリック・ホームズの思考術」を同時に読み進めると、まるでこの本を参考にしたのではないかと思う箇所が散見されることに気づく!(この本は私が長年探し求めていた観察に関する理論について、見事に核心を突き、1冊にまとめあげられた最高の本だと思う。あなたも孤独な観察家なら、きっとこの本に共感できるはずだ)

ただし、「エレメンタリー」では、普通の事件モノとは一線を画している。なんというか、殺人事件を解決しても、まだミステリーとしては終わらないことが多い。それゆえなのか、一度見ただけでは、話は入ってこない(笑)

良い意味でだが、よく45分という時間の中で、ストーリーを複雑に、かつ面白くできるなと思う。(傑作ドラマによくあることなのだが、体感ではどうも45分には感じられない。もっと長く感じられるのだ。別に退屈で、つまらないというわけでもないのにだ)

5. HANNIBAL/ハンニバル

映画「羊たちの沈黙」で登場した悪名高きハンニバル・レクター博士がFBIに捕まる前の話を描いたドラマシリーズ。

これが一体マジックやらメンタリズムやらどう関係するのか。

最初、私はプロファイリング関係のドラマが好きで、その延長線上で手に取ったのだが、それが間違いだということに気づいた。

本作では、主人公のウィル・グレアムが犯人に共感し、プロファイリングする。つまり、そこに論理は介在しない(「クリミナル・マインド」の二番煎じにならないという意味では、新しいアプローチであるとは思う)。その時は「な~んだ、教材にも何にもならないじゃないか」と思った。そこから、ハンニバル好きへシフトしてのほほーんとそのままシーズン1の最後まで見ていたら、まさかの結末で、もう一度シーズン1を見るはめに…。

すると、あることに気がついた。それはもう一人の主人公として登場する若きハンニバルの言葉。

彼の言葉の一つひとつには暗示的要素が含まれていて、しかもカリスマ性の要素も兼ね備えていたことがわかった。

文は短く、想像させるように語り、言葉の意味を一つひとつ正しく理解してはその場その場で使い分け、ばつの悪い質問は別の質問に返し、言葉を引用しては話を都合の良い方向に修正していく。(こういうカリスマ性のあるキャラクターというのは海外ドラマ「フォロイング」のジョー・キャロルもそれと同じだが、その種のマニュアルでもあるのかな。とはいえ、どちらも声優が特に素晴らしく、ぜひとも吹き替えで見てほしい)

これまで文を短くしたり想像させるように語ったりする話し方等々はプレゼンテーションやカウンセリングなどでしか使われず、マジックは例外なのかなとずっと思っていた。

だが、ユージン・バーガーが2000年に同じ話法を用いてセリフを練り上げることについてGenii誌にコラムを寄稿していたことを知って驚いた。

なお、このコラムはロブ・ザブレッキーの「インターセクションをスクリプト・マヌーヴァにて購入した際の購入特典として日本語版である「台本の磨き方」をダウンロードすることができる。

もっとも、英語版でもよいという方はコチラからどうぞ。

Editing Our Scripts | EUGENE BURGER
http://www.magicbeard.com/presentations-essays/editing-our-scripts.php

こちらはユージン・バーガーのホームページで、他にも同時期に書かれたコラムやインタビューを無料で読むことができる。

話を戻して、最後にこれだけは注意しておいてほしい。それは本作があのグロテスクで有名なハンニバルの派生作品だということだ。

映画と同様どころか、映画以上に普通にグロい。というか、グロすぎる。映画に登場した皮剥ぎのバッファロー・ビルなんて、その辺の殺人事件と大して変わらないと思えるくらいに。しかも、なぜだか不思議と映像がキレイで、各々の死体が1つの芸術作品にも見えてくるから恐ろしい。

話はとんでもなく面白いんだけどね…。

マジック関連の話題に繋がる海外ドラマを紹介しようと思ったら、色々と脱線してしまった。マジックをテーマにしたドラマは他にもあるのだが、その中でも面白いものを厳選しようとすると、私の趣味嗜好が反映され、必然的に特定のタイトルに偏ってしまう結果に…。また、書いているうちに「ああ、こんな面白いドラマもあったな~」とか思うところもあって、もう詐欺師系のドラマも一緒に特集したい勢いなのだが、一旦筆を置くとしよう。