リフォーメーションとは対極の手軽さ!トーチ&レストア最強説


※今回も友人のジャンさんにレビューを書いてもらいました。


先日、安かったのでペンギンマジックで「Torch and Restored」のDL版をポチってみました。

名前の語感どおり、内容はトーン&レストア系ですが、これは非常に簡単です。もはやリフォーメーションと対極といっても過言ではないと思います。

元々、買ってみようかと思った理由は値段もさることながら、レビューの数が飛び抜けて多かったことです。

ペンギンのレビューはアマゾン並みに信用できないところがありますが、これが目を引くきっかけではありました。

後から分かったのですが、日本でもストリートマジシャンでDVD付きで売られているようです。それでも、どの道2000円を切りますが/(^o^)\

ちなみに、トーン&レストア(Torn & Restored)とは、カードやお札、新聞紙なんかを破いて、その後に元通りにするマジックをいいます。特にカードについて言われることが多いかもしれません。「torn [tearの過去分詞]=ちぎる」と「restore=復元する」を合わせたまんまな意味です。

破いたカードを使ったマジックを総称して「Torn Card Trick」なんて言い方もありますが、カードを4つに破いて復元することを主にトーン&レストア、略してT&R、TnRなんて書かれたりもします。(ここではT&Rをカードの復元という意味で使います)

個人的に好きなT&Rはトミー・ワンダーの「ワンダライズド」に収録されているトーン&レストアード・カードで、これはこれでかなり簡単な方ではありますが、演出上、最終的にはカードは完全に復元されずに終わる一種のコメディマジックになっています。

私自身、今でこそ催眠術やメンタルエフェクトばかりやっていますが、2014年の夏に日本に帰国するまではずっとカードマジックをメインにしつつカップ・アンド・ボール等もよくやる、いわゆる普通のマジシャンでした。(個人的なお気に入りはフリップスティック)

帰国後、「母国語が使える!今まで知識だけ蓄えてきた催眠術やメンタルエフェクトがようやく実践出来るっぅぅぅ!!!やっほぉぉぉぉぉおおおお!!」と言ったテンションでやり始めたので、キャリア全体で見るとかなり浅かったりします。

Torched and Restoredを使ってみて

凄く簡単!ってのが最大の強みかと思います。 

非常にヴィジュアルで、破く動作も公明正大に見せられます。

しかも演者の負担はかなり少なめで、商品紹介にもあるとおり、角度にもある程度強い。

完璧なマジックは存在しないというのが私の持論で、これにももちろん難点はありますが、他のトーン&レストアと比較したら微々たるものです。

ホリングワースのリフォーメーションのように1枚ずつ復元されるという演出にこだわりが無ければ、こちらに完全に切り替えてしまっても全く問題ないかと思います。

むしろ、ホリングワース系は玄人向けって感じがしますし、マジシャン受けは良いかもしれませんが、一般の人相手にやるには少し冗長な感じもするんですよね…キャラにもよりますが…

複雑な割にウケが悪い可能性があるなら、インスタントにウケたほうが良いのではないでしょうか?(自己満足でやっている方や、環境的にマジシャン相手に見せる機会が多い人であればホリングワースの方が良いかもしれませんね)

トーチで唯一気になる点と言えば、やると高い確率で手が汚れることです。 演出上、灰を払う動作を入れた場合、手が若干黒くなります (^ρ^)

ちなみに、イギリスのオーディション番組「Britain’s Got Talent」でミリタリーマジックマンこと、リチャード・ジョーンズ(Richard Jones)が過去にやっていたりします。(ペンギンマジックのレビューの日付を見る限り、彼がテレビでやってたから爆発的にレビュー数が増えたってわけでもありませんが…)

実はこの方、初回では「SvenPad™」を使った手順を披露したり、他にもイーガル・メシカの「Electric Touch」を使っていたりと面白ければなんでもありって感じがします。

他のトーン&レストア現象と比較してみた

手元にあるT&RのDVDを総ざらいしてみると、いくつか関連資料があったのでこれを機に他のT&R作品と比較してみようかと思います。

個人的な偏見や独断が多く含まれるので、そちらを踏まえた上で見て頂けると幸いですm(_ _)m

〜比較対象~

Torched and Restored」by  ブレント・ブラウン(Brent Braun)
カウンターフェイト」by ウェイン・ホーチン(Wayne Houchin )
トーン」by ダニエル・ガルシア(Daniel Garcia)
リフォーメーション」by  ガイ・ホリングワース(Guy Hollingworth)

カードマジック事典」の中にも「復活するカード」(Hypnoteque by Roger Crosthwaite)としてトーン&レストア現象は載っていますが、これはカード慣れしている人でもちょっと敬遠したくなる内容なので、ここでは上記の4作品をもとに考えてみたいと思います。

現象の違いについて

Torch and Restored(以降、トーチ)の以外は全て1枚ずつくっつく演出になっています。

というより、ダニエル・ガルシアとウェイン・ホーチンはどちらも解説で語っていますが、ガイ・ホリングワースとデビッド・カッパーフィールドの影響を受けているので、演出にかなり似通った部分があります。
 
トーチはホリングワースやカッパーフィールドの影響が無いとは言い切れませんが、トーン&レストアを題材としつつ、かなりヴィジュアルな復元方法が採用されています。
 
また、トーチとカウンターフェイトは商品説明を読んでみるとわかると思いますが、カードを少し燃やします。

トーチではターボライターが、カウンターフェイトでは普通のライターが使われています。

ちなみに、トーチを普通のライターでやろうとすると難しいですし、カウンターフェイトをターボライターでやろうとしても若干難しいので、使う道具の選択にも理由があります。

価格について(笑)

トーチの安さはヤバイです。他の半額以下ですよ…

しかも、全部T&R1ネタしか解説されてません。

この時点でやるまでのハードルがかなり下げられています。

技術的な面について

4つのうち、トーチが最も簡単です。それはもう他と比較するのが間違っているレベルで…

難易度順に並べると

リフォーメーション≧トーン>カウンターフェイト>>トーチ

となります。

やはりリフォーメーションは色々難しいかと思います…

技術的な面もありますが、日本でやるには超える必要のあるハードルがありますし、当時としては画期的だったかも知れませんが、今となってはそこまで騒がれるようなレベルのものではないと思います(異論は認めます)。

ガルシアのやり方はリフォーメーションのとある弱点をカバーした結果、ハンドリングが悪くなっているように感じます。限定環境でないと厳しい気も。ただ日本でやるならリフォーメーションよりはガルシアのほうが使い勝手が良いですね。

一方、カウンターフェイトに関しては、特に弱点はありません。

途中まではトミー・ワンダーのトーン&レストアード的な手順ですし、ストレスもあまり無いかと思います。

T&R作品ではよくカードにサインさせますが、カウンターフェイトでは手順上、使うカードはサインカードである必要はありません。一応、サインカードでも出来なくはないと思いますが、解説の中でサインをする必要は無いとホーチンは言っています。

また、4つとも根本的な原理は同じなので、ある程度のセットアップ(準備)が必要になります。それぞれに優劣をつけるのは難しいですが、強いて言えばトーチは最も簡単です。

(少し前から日本でもSnakeの「Together」が取り扱われるようになったみたいですが、商品解説部分に難ありだと思います。テクニック不要なんて言ってますが、あれはギミックで全て解決してるわけではなく、「カードを復活させる瞬間はギミックに頼ってるよ」って言ってるだけで、現象を最初から最後まで成立させるのであれば普通にスライハンドが入ってきます。しかも途中途中で不自然な動作が多すぎるわで、即刻お蔵入りになる予感がががが…)

【T&R作品の比較マトリックス】

リフォーメーションに関しては技量次第としか言いようが…)

最後に補足として…

調べてみたところ、ブレント・ブラウンの「Torch and Restored」は、今回のDL販売で初めて世に出たわけではないことがわかった。元々は2001年にレクチャーノートの中で発表され、2006年にDVD作品集「デックス、ライ&ビデオテープ」で再録。その後、2013年にPDFで単品販売され、翌年に同名作品の単体DVDとダウンロード販売が行われた様

つまり、昔からマジックをしている人からすれば、もしかしたら目新しさにかけるのかもしれない。だが、ここ5年以内にマジックを始めた世代からしたら、価格といい、内容といい、目から鱗って反応は至極真っ当だろう。

ジャン
蕎麦とチョコレートが好き。