相手のペンデュラムに影響を与える4つのコツ


近年、ルーク・ジャーメイ(Luke Jermay)の「Jermay’s Mind 第2巻」に収録された「ゼナー」の演出方法が注目されたり、催眠術師兼マジシャンのバーディーが年内にペンデュラムをフォーカスした新作「MRI Pendulum」の発売されるなど、地中に埋もれたマジックが再び掘り返されようとしている。

振り子やペンデュラムはそれ自体に何の仕掛けもないばかりか、そのやり方について日本語で解説された書籍やDVDが極端に少ないために道具や現象は知られていても、肝心のやり方についてはほとんど知られていないままだった。

そこで、本記事では、ペンデュラムのマジックの研究一助となるばく、大まかにその内容をまとめてみた。

◆そもそも、ペンデュラムってなに?

ペンデュラム(pendulum)とは、日本語で「振り子」を意味し、元々水脈や鉱石の探索、さらには心の探索と称してスピリチュアルな分野でも多分に使われている。

特にダウンジングやコックリさんといった現象では、「クレバーハンス効果」や「観念運動反応」、さらには「筋肉疲労」の影響だと、テレビなどで幾度となく取り上げられ、それ自体周知の事実となりつつある。

しかしながら、観客にペンデュラムが独りでに動く感覚を体験させたい場合、こうした心理作用だけでは、マジックとして成立させることはできないことを知っているだろうか。

◆ペンデュラムを使ったマジック

ペンデュラムを使ったマジックでは、主に次のようなテンプレートが用いられる。

1) カードを1枚選んでもらう
2) 他の数枚のカードと混ぜる
3) カードを裏向きにして、どこにカードがあるかを被験者のペンデュラムを使って当てる

ここで重要なのは、カードにはワンウェイやペンシルドットを施し、あらかじめ演者は被験者がどのカードを選んだか(カードの名前は知らなくてもよい)を把握しておくことだ。

なぜなら、クレバーハンス効果や観念運動反応では、観客が事前に答えを知っているからこそ、無意識に微細な揺れが生じる。けれども、観客自身は何も知らず、演者(自分)だけがカードの場所を知っている場合、所定の場所でペンデュラムを揺らすために暗示が使われる。以下では、暗示を入れる際に注意すべき4つのコツについて取り上げる。

1. 筋肉の疲弊

暗示をより効果的に働かせるためには心理的な背景以前に物理的な影響を与える必要がある。それこそが先に挙げた「筋肉の疲弊」だ。同じ状態を維持する、あるいは不安定な態勢に身を置くことは短い時間であっても、すぐに筋肉を疲弊させることができる。

注意しなくてはならないのが机に肘をつかせないこと。机に肘を置いてしまうと、肩や背中の筋肉を使わなくなるために疲れにくくなり、かつバランスが取れてしまうため、ペンデュラムの反応が鈍くなりやすくなる。

2. 被暗示性を高める

ペンデュラムを見るように言ったとき、私たちは何が見えるだろうか。もちろん、それはペンデュラムであることは間違いない。だが、そこにはペンデュラムを吊る糸や自身の手、さらには肘までが視界に入っているだろう。もし手を見ようとすれば、観念運動の背景となる糸口が目視され、反応が鈍くなってしまう。

そこで、それを阻止するために、観客にペンデュラムの先端を見るよう促す。振り子の先端を見させることで、次の2つの効能が発揮される。

1)視野が狭まり、自身の微細な手の揺れへの関心を取り除く
2)振り子の先端という一点に集中することで、外界の情報を遮断し、被暗示性を高める

3. 反応を誘導する方法

いくつかのカードの中から1つの地点のみに反応を起こさせるためには、進行役である演者の手にかかっている。無反応状態を維持したい場合には何も変化が見られないことをそのまま言うか、何も言及しないまま、すぐさま次の地点に移る。観客は何も知らないため、振り子が揺れることはない。仮に動きが見られたとしても、進行役は自分自身だ。「変化は見られない」と無視すること。古い言葉に、それが失敗であったとしても、マジシャン自身がそれを大したことがないと振る舞えば、観客もそう思ってくれる。

これに対し、反応を起こさせたい場合には観客に期待感を提供し、時間的猶予を与える。言い換えれば、観客にこれから何かの動きがあることを伝え、ペンデュラム本体に意識を傾けさせる(=観念運動を誘発させる)。つまり、無反応のときよりも多く話し、暗示を入れる機会を作る。そして、少しでも反応が見られれば、もうこちらのものだ。あとは、煙のないところで煙をたたせ、山火事にすればいい。

ちなみに、一定の反応を起こした後、別の場所で同様の反応は起こしにくくなる。なぜなら、先程一度強い反応を起こしたという事実と答えは1ヶ所のみということから、無意識に反応が起きにくくなるからだ。それでも、一応「離れると少し動きが鈍くなりますね」程度の言葉を添えて反応を抑え込むようにしている。

4. パラフレーズを意識する

パラフレーズ(paraphrase)とは、言葉の言い換えを指す。催眠術やコールドリーディングでは、同じ言葉を何度も繰り返すのではなく、なるべく複数の語句を使い、現場の実況に勤しむことが求められる。

これはペンデュラムにおける暗示でも、非常に重要なことだと思う。「どんどん動いていく、どんどん動いていく」といった言葉だけを単調に繰り返すのではなく、「徐々に動いてきます。前後、または左右に、少しずつ動いていきます。左右に動いてきましたね」といったように言葉を少しずつ変えていきながら、かつ状況に合った実況をとった方が周囲を飽きさせず、観客の想像力を刺激し、イメージを膨らませることができる。

【振り子の動きに焦点を当てたキーワード群】
「どんどん」「くるくる」「ぐるぐる」「大きく」「強く」「少しずつ」「徐々に」「段々(と)」「ゆっくりと」「ちょっとずつ」「次第に」「自然に」「ひとりでに」「おのずと」「もっと」「より」「かなり」「揺れる」「動く」「回る」「回転する」「円を描くように」「前後に」「左右に」など…