手品好きあるある「次こそ良いマジックに出会えるはず症候群」


過去を振り返ってみてほしい。初めてマジックショップで「マジック」を買ったときのこと。

普通の本屋に置いてあるような普通の本が届くのかと思いきや、なんともまあ安っぽい冊子が届いたとき、どんなことを思った?

問題は中身だと自分に言い聞かせ、ページを開いた瞬間、特に写真もなく、ただただ文章のみでなにやら専門用語らしきカタカナ語がチラつく。さて、あのとき、どんな気分だった?どんな感情に襲われた?(まあ、覚えていればいいんだが…)

無駄に煽り立てるマジックショップの商品紹介文を読んで、必要以上に期待させられたのも一因だろうが、そんな当時の経験が今でも尾を引いている人は多いと思う。特にDarwin Ortizのコラム「Next Book Syndrome」を読んだとき、物の見事に心臓に撃ち抜かれた気分だった。

次こそ良いマジックに出会えるはず症候群

私にはダイレクトマーケティングで成功した友人がいる。

彼によれば、しっかりとしたメーリングリストさえ持っておけば、仕事の半分は終わったようなものだそうだ。

彼曰く、これまでに最も稼いだジャンルはダイエット商品のようで、興味深いことにダイエット商品を買う人には特有の行動パターンがあるそうだ。

例えば、先週、ダイエット商品を買った購入者リストというのは最も適したメーリングリストだといえる。

なぜなら、彼らは共通して商品を注文しては、そこに誰もが唸る夢のようなダイエット法がないとわかると、すぐにそれを投げ捨て、次の商品に目を向けるからだ。

もちろん、ちゃんとそこには適度な食事と運動という至極真っ当な方法が書かれているのにだ。

彼らはこう望んでいる。きっとどこかに努力せずにダイエットという名の「奇跡」を起こす方法があるはずだと。

詰まるところ、これは我々マジシャンにも同じことがいえる。

きっと多くのマジシャンたちが自宅の郵便受けに対して、似たような思いを馳せた経験があると思う。

次こそ、素晴らしいマジシャンになれる究極の秘密(=マジック)がこの中にあるはずだと。そう期待感に胸を躍らせたことがあるはずだ。

そして、その秘密を知った瞬間、いつものように再び失望感に苛まれる。


数ページに渡る同コラムのうち、これは「中毒性(The Addiction)」という章から一部抜粋したのである。きっと薄々気付いていたけれど、自分だけじゃなかったんだって感覚に陥ると思う。

元々は2005年1月に半年間限定(20ドル)でオンラインのマジック誌が設けられた。そこにはSteven Youellが発起人となって、Andi GladwinやDarwin Ortiz, Mike Powersらが集い、各々にコラムを掲載。

その8ヶ月後、新たに加えた3つの記事とそれまでに投稿された全記事が1ヶ月間限定で無料公開された後、サイトは閉鎖された。このとき、投稿された記事の1つが今回の「Next Book Syndrome」である。

翌年、同コラムは「Magic Magazine」(2006年3月号)に再掲。また後にVanishing Inc.にて、無料でダウンロードできる「MAGIC IN MIND」という幾多のマジシャンたちが自身の作品集等に記したマジックに関するコラム集をまとめた資料に再び収録されるに至った。