2006年に公開された映画「プレステージ」では、ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールがそれぞれ19世紀のマジシャンに扮し、熾烈な闘いを描いた作品だが、このようなマジシャン同士の争いは現実の世界でも過去に何度か起きていたりする。
今回はその中から5つの歴史的抗争を紹介しよう。
1: フーディーニVSコピーキャット
1900年8月、伝説の脱出王、ハリー・フーディーニはロンドンのアルハンブラ劇場で公演を行っていた際、突然、シロック(The Ciroc)と名乗る男が現れた。シロックは手錠抜けの演目を最初に考えたのは自分だと観衆の前で主張したり、フーディーニはアメリカになど行ったことがないと言って彼をおとしめようとした。ところが、観衆の1人が「数年前に彼をアメリカで見た」とその場で証言され、即刻、四面楚歌状態に。
その後、フーディーニは「Bean Giant Handcuffs」という簡単には縄抜けできないと評判の特殊な手錠を取り出し、すぐさま手錠抜けのパフォーマンスを行ってみせた。そして、「君も同じことをやってみせろ!」と言い放ち、もし成功したら500ドル進呈しようとも言ったそう。シロックはその挑戦に乗るも、あえなく失敗。この一件によって、フーディーニの名声はより一層高められることとなった。
このほかにも、当時、フーディーニにあやかって売名行為を行おうとした人間は後を絶たなかった。
『アブラカタブラ 奇術の世界史』によれば、彼がオランダで興行している際、隣国ドイツのドルトムントにて、エンゲルベルト・クレピーニ(Engleberto Kleppini)という男が「手錠抜けでは俺が一番。あのフーディーニもやっつけたことがある」と触れ回っていると聞いて、彼は急遽現地へ向かった。
そこでクレピーニのサーカスを訪れ、観客の1人として変装。クレピーニは本人が会場にいるとはつゆ知らず、いつものように大口を叩き出すと、そこに颯爽とご本人がご登場。フーディーニは持参した手錠で同じことができれば、5000ドル進呈すると告げ、彼もまたフーディーニの前に敗北を喫したそうだ。
当時、わかっているだけでも、40近い模倣者たちが巷にのさばっていそうで、その模様は以下のサイトでまとめられている。
Houdini imitators | MagicPedia
http://geniimagazine.com/magicpedia/Houdini_imitators
日本では、「メンタリスト」や「メンタリズム」という言葉が世に出た瞬間、その劣化版が巷をうろつくようになった現代を思わせる。人づてに聞く限りでは前田知洋も同じ現象を引き起こしたとか。
とはいえ、流行に乗るという意味では、こういったことはさして悪いことではない。それが未知の分野だったとしたら、もっと介入して、幅を広げるべきだとも思う。
さすがにフーディーニの頃のように本人と対峙しようなんていうキチガイはいなかったろうが、オリジナルに喰ってかかる、彼らの行いを前座にして自分の行為を高めることは多々あったろう。無論、その方が相手にイメージさせやすいし、話も進む。人々が求めるものを提供していると考えれば、実に自然な行いに見える。
そう考えてみると、フーディーニの行動はやや異常に思えてくる。後年、彼が霊能者のトリックを暴きに回っていたのも、新聞に自分を取り上げてもらうためだったと考えれば、それは素晴らしいプロモーションであり、どこか不誠実さを感じてならない。
2: セルビットVSゴールディン
1921年、イギリス出身のセルビット(P. T. Selbit)は「人体切断マジック」(Sawing Through a Woman illusion)を考案した。今でこそ人体切断マジックはありふれたイリュージョンの1つだが、当時初めてそれを目にした人々にとっては、一大センセーショナルをもたらした。
ところが、同年、1つ海をまたいだアメリカのステージマジシャン、ホレス・ゴールディン(Horace Goldin)が「このマジックは1909年に既に開発していて、1917年にはニュージーランド、1919年にはニューヨークで公演を行った」として名乗りを上げた。
その後、S. A. M.(全米マジシャン協会)に召喚されたゴールディンは自身の人体切断マジックを披露し、その手法も公開した。そこでわかったのはセルビットの方法とはいくつか違う点があったということ。
上記の2つの写真を見比べてみるとわかる通り、セルビットの方法では、アシスタントを完全に箱の中に入れ、相手が箱の中にいることを確かめるかのごとく、ロープで縛り、それを周りにいる観客に掴んでもらっている。
これに対し、ゴールディンの方法では、箱から頭と足を外に出すことができた。このように2人の見せ方には明らかな違いがあったにもかかわらず、ゴールディンの主張はあえなく棄却された。
なぜゴールディンの主張が通らなかったのか?もしどちらの方が優れているかでオリジナルかどうかを決めたのだとしたら、論点のすり替えも甚だしい。元々は2人の方法が全くの同一なのか、そうでないかと精査する意図があったはずなのだが…。
無論、この判断に不満をもったゴールディンはその後、自身の人体切断マジックを大々的に宣伝。時には「死と隣合わせ」という危険な雰囲気を演出するために劇場ロビーに看護師や担架を並べたりしていた。
ゴールディンの熱意はそれで終わることはなく、後に箱を用いずに行う方法(上の写真参照)や電動式の回転ノコギリを使う方法、3つあるいは4つにジグザグに切断する方法などが発明された。
セルビットVSゴールディンの逸話は度々このパッとしない終わりを迎えた後、マジックにおける改案の重要性を説いて、そのまま筆を置いてしまっている。これだと、口には出さずとも、まるでゴールディンがパクったと暗示しているようなものだ。
しかし、この話にはまだ語るべき教訓がある。
1923年6月12日、ホレス・ゴールディンはアメリカで人体切断マジックの特許を取得した。晴れて人体切断マジックが公的に自分のものとなったわけだが、その10年後に悲劇が起こる。
R・J・レイノルズ・タバコ・カンパニーがタバコの広告でゴールディンの人体切断をタネ明かししたのだ。(厳密には計39個のマジックをタネ明かしした中にゴールディンの方法が含まれていた)
即刻、彼は不正競争防止法(営業秘密の保護)に乗っ取り、R・J・レイノルズ社を告訴した。ところが、判事は彼が1923年に特許を取得した事実を引き合いに訴えを退けた。
ゴールディンにとっての唯一の救いは、今日「人体切断マジック」と聞いて、最初に思い浮かぶイメージが彼のバージョンによるところだろう。セルビットのマジックにいちゃもんをつけた不届き者として忘れされることなく…。
結局のところ、歴史に名を刻むのはそれを最初に公的な文書として(説得力のある形で)残した方だということなのか。
けれども、マジックの場合、トリックという名の特性上、考えついて即発表というのは中々できたことじゃない。他の同業者に知られずにある程度の期間、自分のオリジナルとして差別化を図りたいし、文書に記述したからといって独占権を有するわけでもない。
このどうしようもないジレンマを解決する方法はやはりショップ同士の同盟なのか、どこかの社団法人やNPO法人による業界整備なのか。
今は21世紀だ。方法はもっと色々とあるはずだと信じたい。
日本で起きた手品のタネ明かし訴訟
ちなみに、日本では2007年にこんな事件があった。あるニュース番組で、シガレットスルーコイン(タバコがコインを貫通するマジック)やバイツアウトコイン(コインの端を噛み切るも即座に復活するマジック)の仕組みがタネ明かしされ、マジシャンの藤山新太郎を原告代表に、そのほか40名を超えるプロや愛好家たちが集い、集団訴訟を起こしたのだ。
(元々は2006年11月にギミックコインを製造するために硬貨を違法に加工したとして、大阪府の製造業者らが貨幣損傷等取締法違反容疑で逮捕されたことが発端だった。それを報道番組が正規品は一体どういう仕組みなのかを伝えるために必要に迫られてタネ明かしを行った様。調べた限りでは、報道されたギミックコインとは全く関係ないマジックを興味本位にタネ明かししていたとも伝えられている)
とはいえ、それまでマジックのタネ明かしは幾度となく行われていたはずだし、「なぜ今さら?」って感じだ。マジシャンの懐に金品を差し込むことなく、勝手にタネ明かしされたのがそんなに気に食わなかったのかな?(笑)
まあ、冗談はこれくらいにして。私も当時そんな報道があったなんて全く覚えていないし、こうした事件があったことも今年に入ってから知った口だ。
結論を言うと、原告らの訴えは普通に棄却された。
当初は知的財産権の侵害を視野にテレビ局側から約198万円の損害賠償と謝罪放送をふんだくろうとしたそうだが、そもそも著作権は感情や思想を創作的に表現した媒体を保護するものであって、アイデアそのものは保護されない。
敗訴して当然の話だ。
しかも、マジックを買ったときに「タネを不特定多数の人にバラしてはいけませんよ」なんていう契約書を書かせてるわけでもなんでもない。
仮に契約書を同封し、マジックを買うことが契約に同意したものとみなされたしよう。それでも、原告は愛好家連中ではなく、マジックを販売した業者側であるべきではないだろうか。それに訴えるべきはテレビ局などという第三者ではなく、実際にその秘密を買った個人であるべきはず。
文字通り、それが門外不出のトリックだったとしたら、営業秘密の不正取得が適用できたかもしれない。どちらにせよ、マジックショップに行けば、金さえ払えば、誰でもその秘密を知ることができる。もはや秘密でもなんでもない。
コンビニで買ったマンガの内容をテレビでネタバレしたら、著作権法違反になるのか?(笑)
これもそれと同じレベルの話だ。
マジックが芸術だと考えたがる人は多い。だが、その思想が現行法で十分に適用できると恣意的に考えたがゆえの行動だったのか。それとも、勝てる見込みがないとわかっていながら、世間に倫理的な何かを知らしめたかったのか。
話が少し脱線してしまったが、あの当時、マジックが趣味でない普通の人々はどう捉えていたのだろう。巷で起こる強盗事件と同様、至極どうでもいい話だったのか。人によって、マジシャン怖いと映ったのか。あるいは、マジックに興味を持つきっかけとなりえたのか。
3: ジェームズ・ランディVS超能力者たち
1970年代、マジシャンのジェームズ・ランディ(James Randi)は超能力を名乗るユリ・ゲラーとの衝突を契機に大きな注目を集めた。その後、超常現象や疑似科学に対して科学的かつ批判的な調査を行う非営利団体「サイコップ」(現CSI)の創設メンバーとして加わり、幾多の超能力者及び霊能者たちのウソを暴いてきた。
例えば、1980年、ランディはある番組で超能力者、ジェームズ・ハイドリック(James Hydrick)と直接対決する機会を得た。ハイドリックによれば、彼は武道や修行を通して物体に直接触れずにモノを動かすことができるようになったそうだ。また、彼はその当時、アメリカのリアリティ番組「That’s Incredible!」に出演し、注目の存在でもあった。
James Hydrick “That’s My Line ” part 1 of 2 日本語字幕付き | YouTube
(日本語字幕付きですが、YouTubeの字幕機能をオンする必要があります)
番組の流れはまず超能力者がデモンストレーションし、次に論理的に統制された状態で同じことができるかを検証する。しかも、検証時には科学系の大学教授や超心理学者らの立ち合いのもとに行われ、うまくいかなかった場合には相手側に反論の時間を与えたりと科学的な内容。
(とはいえ、この反論が苦し紛れの言い訳にしか聞こえないのがどこか笑えてくるし、ある意味それが狙いであるかのようにも見える)
Part 2の動画では、いよいよ本格的な検証番組へと変わる。
ハイドリックはデモンストレーションとして、直接触れずに電話帳のページをめくって見せた。これに対し、ランディは「彼は息を吹きかけているだけだ」と指摘。それを証明するために電話帳の周りに小さな発泡スチロールを敷き詰め、本当に電話帳のページだけに何らかの影響を与えているのかを検証しようと試みた。
James Hydrick “That’s My Line ” part 2 of 2 日本語字幕付き | YouTube
すると、途端にハイドリックはページをめくることができなくなり、それから30分もの間、電話帳と苦しい格闘を繰り広げていたそうだ。翌年、彼はDan Koremのインタビューの中で単に息を吹きかけていただけのトリックであると認めた。
ちなみに、ランディに暴かれて以降、ハイドリックの足取りが気になったので少し調べてみた。
あの事件から9年後、彼は10歳~13歳の6人の少年らに計11回の性的虐待をはたらいた罪で逮捕され、懲役17年を言い渡されていたことがわかった。刑期は既に満了しているものの、確認できる限りでは、2015年時点ではまだ精神病院に収容されている模様。心理学者のJesus Padillaによれば、ハイドリックは小児性愛に苦しんでおり、それと同時に反社会性パーソナリティ障害を患っていると述べている。
(アメリカでは、SVP法に乗っ取り、性的暴力犯罪で有罪判決を受けた者は更生の余地がないと判断された場合につき、国立病院の管理のもと民事上拘束を続けることができる)
しかも、テレビ出演する3年前から既に2度の誘拐と拷問の罪で逮捕されていた過去があり、服役中に今回のトリックを思いついたのだとか。もしランディが暴いていなかったとしたら、一体どうなっていたのであろうか。トリックを暴かれたのがストレス要因だったのか、それとも彼の生い立ちを考えるに元々そういう人間だったのか。
これ以外にも、ランディVS超能力者の戦いは何年も続いた。
その模様は超常現象を懐疑的に調査する団体「ASIOS」の発起人が運営するサイト「超常現象の謎解き」の中でも一部取り上げられている。
検索結果「ランディ」| 超常現象の謎解き
http://www.nazotoki.com/?s=%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3
関連記事:ジェームズ・ランディの100万ドルチャレンジが実は終了していたことが判明
4: テラーVSダッジ
前述のとおり、マジックのタネには著作権はない。だからといって、必ずしもすべてのマジシャンがそのまま泣き寝入りというわけでもない。
2012年、アメリカの有名な2人組マジシャン、ペン&テラーの片割れ、テラーは自身の長年の持ちネタである「Shadows」に似通ったマジックがYouTubeを介して販売されていることを知り、同業者のジェラルド・ダッジ(Gerard Dogge)に対して訴訟を起こした。
テラーは物言わぬマジシャンとして活躍していて、動画を見るとわかるとおり、彼の演技では、パントマイムが感情や行動の意思を表現している。そしてアメリカでは、こうしたパントマイムやジェスチャーによる表現方法は芸術の一種とみなされ、著作権保護の対象となりうる。テラーに告訴された相手側のマジシャンもまさに同一のサイレントパフォーマンスを行っていた。
しかも、この「Shadows」は彼が1983年に特許を取得しており、それがテラーが考案者たる実質的証拠とみなされ、結果、勝訴に至った。
連邦判事は相手側に販売の即時差し止め命令を出し、懲罰的賠償請求として54万5000ドルを支払うことを命じた。
前述でも少し触れたが、実はマジック用具も特許を取得することができる。舞台装置と偽ってとかそういう話でもなく、国際特許分類(IPC)及び日本固有の特許分類(FI)の中に「A63J21/00」(奇術用設備/奇術師のための補助装置)というれっきとした分類があるのだ。
ちなみに、特許には2種類あり、これまでにない全く新しい発明(=特許)と既存の方法と組み合わせて考案したもの(=実用新案)に分けられる。それぞれ独占期間や公開までの期間に違いがあるが、ここでは便宜上、特許と呼ぶ。
マジック関連の特許について知りたい場合、特許情報プラットフォームで「手品」と検索すれば、その内容を簡単に閲覧することができる。(検索窓にマジックやトリックと打ち込むよりも、手品の方が検索で絞り込みやすい)
特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
こと「A63J 21/00」に絞って調べてみると、2017年6月12日時点で548件の特許が公開されていることがわかった。そしてその多くが手品玩具メーカー「テンヨー」であり、数年ごとに律儀に特許を出願していることがわかる。
ただし、勘違いしないでほしいのは仮にこの特許情報を閲覧したとしても、一読してその内容を理解できるかというと、そうでもない。というか、何度読み返してもわからない(笑)
特許情報にはその物体の構造が事細かに書かれているのだが、技術系の言葉で埋め尽くされているがゆえに、ほとんど中国語に見えるほど。実際の演技動画と照らし合わせて読んでみても、わかったような…わらないような…という印象が強く、自由に閲覧できるからといって、その内容を誰しもが理解できるようには書かれてはいない。
それに特許情報だからといって、第三者がマジックの秘密を公開する際、大概特許が出願されてから何年も経ち、人々の関心を一手に引き受けたようなネタだ。ゴールディンの人体切断しかり、デビッド・カッパーフィールドのフライングしかり、マイケル・ジャクソンのゼログラビディーしかり…。
5: クリス・エンジェルVSデビッド・カッパーフィールド
2016年11月27日、マジシャンにしてイリュージョニストのクリス・エンジェルがこんなツイートを投稿した。「ついにツイッターのリアルフォロワーが100万人に達した。DCみたいに全部偽フォロワーで埋め尽くしたりはしていない。リアルなファンはお金じゃ買えないんだ。感謝する」
https://twitter.com/CrissAngel/status/802804652026654720?ref_src=twsrc%5Etfw&ref_url=http%3A%2F%2Fwww.business2community.com%2Fbrandviews%2Faffinio%2Frevealing-magicians-secret-copperfield-angels-audience-illusion-01716399
この「DC」というのが何を隠そう、あのデビッド・カッパーフィールド(David Capperfield)を指していた。当時、現地のゴシップサイトでは、ラスベガスで公演を行うなど互いに共通点の多い2人の有名なイリュージョニストによる、これまで類を見ないマジシャン同士の抗争と書き立て、メディア各社がこぞってネタにしていた。
特に2016年11月というと、その1ヶ月前にはフォーブスが「最も稼いでいるマジシャン2016」を発表し、クリス本人はその2日後にこんなツイートを投稿。
同年5月にオンライン経済誌「Bloomberg」に載った自身の収入の実態に関する記事を引用リツイートし、「最も尊敬される経済誌は偏見なしに正しいものだった。私の半分の規模でパフォーマンスする人みたくフォロワーやレビューを金で買うことはしない」とコメント。
Most respected business mag got it right without bias or agenda&I don't buy twitter followers or reviews like he who plays venue 1/2 my size https://t.co/5cyx8ZLalX
— Criss Angel (@CrissAngel) October 28, 2016
このツイートでは個人名は出していないものの、Bloombergの記事内容とフォーブスの記事と照らし合わせて考えるに、明らにデビッド・カッパーフィールドのことを指していた。そして、このツイートがゴシップサイトによって再び拾い上げられるやいなや、「本当は誰が一番稼いでいるのか?」「どちらが最もフォロワー数が多いのか?」を検証する記事がいくつものメディアサイトで取り上げられた。
クリス・エンジェルが訴えた2つの主張
主張1:デビッド・カッパーフィールドのフォロワーはすべて偽者だ。
海外メディア「Affinio」が独自のアルゴリズムを使って調査したところ、彼のツイッターのフォロワーは84%がボットだと分析。当時、彼のフォロワー数は約359万人いるとされていたが、そのうち59万5912人がリアルなアカウントだとわかった。さらに、アクティブユーザーに関しては、たったの6%(22万7031人)しかいなかった。
主張2:クリス・エンジェルのフォロワーはすべて本物だ。
同調査によれば、彼のフォロワーの47%はボットで、これは約103万人にいるフォロワーのうち48万5000人が偽アカウントであることを意味していた。
当時、メディア各社がこぞってこの話題をネタにしていたわけだが、カッパーフィールド本人は沈黙を貫き通していたため、クリスが一方的に喧嘩を売り、それに続けとメディアが検証記事を書きつらしたに過ぎなかった。
結果的には「どちらもフォロワーを買っていたんじゃないか?」「マジシャンの周りを囲う観客なんてそんなもの」みたいなゴシップサイトばりのパッとしない結論に落ち着いている。
しかしながら、最もリアルフォロワー数が多いマジシャンとは誰なのか少し気になるものだ。
あの一件から約半年経っているが、これを機にリアルフォロワーの有無を確認できる既存のサービスを使って、最もリアルフォロワーの数の多いマジシャンを探ってみよう。
リアルフォロワーが最も多いマジシャンは誰なのか?
今回、リストアップしたのはメディア向きといえる総計15名のマジシャン。
クリス・エンジェル(Criss Angel)、ダン・スペリー(Dan Sperry)、デビッド・カッパーフィールド(David Copperfield)、デビッド・ブレイン(David Blaine)、ダイナモ(Dynamo)、ダレン・ブラウン(Derren Brown)、ルイス・ピエドライタ(Luis Piendrahita)、ペン・ジレット(Penn Jillette)、テラー(Teller)、コリンズ・キー(Collins Key)、マイケル・カルボナーロ(Michael Carbonaro)、ブライアン・ブラッシュウッド(Brian Brushwood)、ピフ・ザ・マジックドラゴン(Piff the Magic Dragon)、キース・バリー(Keith Barry)、DaiGo
(スペインのルイス・ピエドライタやYouTuberのコリンズ・キーがマジックを専業にしているのかは気になる点だが、少なくとも今年のAMAアワード受賞者として、今回リストに入れた次第)
まず、単純に現時点(2017年6月12日時点)でフォロワー数が多い順に並べ替えてみると、こんな感じ。
今回、偽フォロワーの有無を調べるのに使うサービスとして、「Fakers」と「Twitter Audit」の2つを採用した。
「Fakers」とは、対象のアカウントからフォロワーを最大1000人サンプリングしてスパムチェックし、その内訳を「Fake(偽フォロワー)」「Inactive(活動していないフォロワー)」「Good(活動しているフォロワー)」の3つに振り分け、それぞれをパーセンテージで示してくれる。
公式サイトによれば、ツイート数やフォロワー数が非常に少ないまたはゼロのアカウントなどは「Fake」にカウントされているとのこと。また、1000人のサンプリングゆえにフォロワーが5万人以下のアカウントは高い精度でその内訳を知ることができ、それ以上でも参考データにはなるようだ。
次に「Twitter Audit」とは、対象アカウントからフォロワーを最大5000人サンプリングし、ツイート数や最後にツイートした日付、フォロワーの割合を分析し、それが本物か否かを判断している。先日のトランプ大統領の偽フォロワー疑惑で使われたサービスでもある。
これらのサービスはどちらも自身のアカウントとアプリ連携しないと表示されない仕組みのようで、上記にリストアップしたマジシャンのほとんどが去年のデータとなっている。また、そのうちの数名は現在のフォロワー数と比べて、数が極端に違う者もいた。そこで、参考データとして両者のサービスを併用することにした。
「Twitter Audit」を使って分析したリアルフォロワーの数ランキング
「Fakers」を使って分析したリアルフォロワーの数ランキング
「Twitter Audit」では、フォロワーのツイート履歴などでアクティブか否かを判断しているが、だからといってそれが真に偽フォロワーだとは判断できない。手のツイートを眺めるだけの人や前に使っていたが途中で止めてしまった人、別のアカウントに乗り換えて前のアカウントをそのまま放置している人などの存在が考えられる。そこで、「Fakers」では、参考データとして、InactiveとGoodを足した数値も同時に表示することにした。
以上の分析をまとめると、2017年6月12日時点で最もリアルフォロワー数の多いマジシャンはイギリスのマジシャン、ダイナモではないかと考えられる。
他にも、SNSの分析ツールを使ってマジシャンたちの人気を推し量ることもできそうだが、あくまで参考値として楽しむのが無難だろう。