2018年3月1日、手品掲示板「Magic Cafe」において、トリックオブザイヤー2017が発表された。昨年はまさかのマジック専用アプリが選出され、少し肩透かしな部分と一体何ができるのかという興味が入り混じる結果となったが、果たして今年は…
The Gift by Angelo Carbone
最大4パターンの予言が仕込めるギミックBOX。
動画でのカード当てが再現できるように特製デックが付いてくるが、本分はあくまでも、この”紙製の箱”だと考えるとしよう。
お高いギミックには関心がない私も、お馴染みの(気休めとしか思えない)推薦コメントにダレン・ブラウンの名前があるのを目にし、なんとなく興味を引かれた覚えがある。
見た目は厚紙で丁寧に作られた、ただの箱。
元々腕時計が入ってたのかな?ってぐらい大きさで、デザインもシンプル。怪しさは一切ない。
手に取った感じ、正直、「これは自作できるな」と思った。元が自作なのは当たり前だけれど、何だか図工の時間の延長戦でできそうだと思えたのだ。
これは別に荒い作りであるとかそういうわけではなく、仕掛けを知ってさらにそう思えた。他のショップがこの巧妙な仕掛けを「からくり」と称するのもわかる。
ギミックを作るのが好きな人なら、きっともっと安価に作れるんじゃないかな。
最近、ゴットタレントでもインフェルノと組み合わせた手順をやっていて、そういえばあれも4パターンだなぁ、なんて思ったり。
Magic Maddox has everyone SPELLBOUND with gravity-defying act! | Semi-Finals | BGT 2018
かといって、必ずしも4パターンで考える必要もない。
例えば、コインの表裏を予言するマックス・メイビンのポジティブ・ネガティブの原案は元々ダブルフェイスを使っていた。これも同じで予言が2パターンに分かれるものでも使える。
商品動画にあるように最初から使う道具を箱にしまっておくようにしとくと、なおも無駄がない。予言の箱としてドンっと出すより断然良い。
そう考えると、箱単体のリフィルが欲しいところだが、残念ながらリフィル単体での販売は行われていない。
今年の5月に確認した際にはどこの海外ショップでもずっと売り切れ状態が続いていたのだが、9月時点ではもうすんなり再入荷している様子。
国内では、5月時点での売り切れムードが尾を引いているせいか、どこのショップでもなぜだか再入荷されておらず、一部の店舗で在庫がわずかに残っているようだ。
発売当初、まるでゲーム機のようにブラック、ゴールド、レッドとニューカラーを段階的に発売していたので、いずれ再復活すると思っていたが、一体いつまた出たのやら。
ちなみに、考案者のアンジェロ・カルボーン(Angelo Carbone)は過去にテンヨー製品を手掛けたこともあるイギリスのクリエイター。
「The イリュージョン」や「プリズンボックス」「フローティングカード」は彼の作品。
特に「The イリュージョン」に関しては、小1の時にデパートで買ってもらった記憶がある。まさか巡り巡ってこんな形で再会(?)することになろうとは…。
トリックか、作品集か?
今年のトリックオブザイヤーでは、投票の裏で思わぬ混乱が起きていた。
実は当初、有力候補としてマジックアプリ「Inject 2.0」が挙がっていた。前回、マジックアプリが選出されたことを皮切りに、今年もその潮流に乗るのかと思われた。
Inject – 8 Amazing Effects in ONE video! | YouTube
借りたスマホを使って、当てものやエニエニ、記憶術などができるマジックアプリ。
Greg Rostamiは「iForce」の考案者でもあり、過去にいくつものマジックアプリを出している人物。
1つのアプリで10個以上のマジックができ、中にはスマートウォッチと併用可能な作品もある。
例えば、動画の最初に出てくる「Google Peek」は、子供時代に関連する人やモノ、場所を1つ思い浮かべもらい、その名前をGoogleで検索してもらう。そして、演者は何を思い浮かべたのかを当てるというもの。
これ自体は中々面白いと思うが、一部の収録作品(ACAAPやACAAN)では事前に指定のURLに検索させるものあり、やはりここが鬼門だろう。演者が密かにURLを打ち込むか、何か理由をつけて観客自身に検索させるか。
以前にも書いたが、マジックアプリは普段使い慣れているアプリかプリインストールされたものでないと、「すごいね。それ、何ていうアプリ?」と聞かれかねない。今回の場合なら「すごいね。これ、何ていうサイト?」になってしまいそうで怖い。
もはやこれは観客のスマホを借りてできるマジックの宿命のような部分ではあるかもしれない。
それでも、当初はこの「Inject 2.0」が有力候補として投票が集中していたわけだが、その途中であるユーザーから「これはトリックではなく作品集なのではないか」という横やりが入った。
確かに、「Inject 2.0」は1つのアプリの中にそれぞれ違う作品が収録されており、一概にどんなことができるかを説明することはできない。そんな”トリック”が何であるかを言い表せない代物に”トリック”オブザイヤーという称号を与えるのはいかがなものかというわけだ。
挙句の果てには、「Inject 2.0」というそのタイトルからも伺えるとおり、以前に発売された製品のバージョン2であることを理由に2017年度中に考案されたネタではないとの指摘が浮上し、候補にふさわしくないという意見まで飛び出た。
これに対し、一部のユーザーが前々回において同賞に選ばれた「SvenPad」もトリックではなくツールとしての側面が強いと反発。
こうした指摘を受け、発起人のJamie D. Grantが公式に候補から外し、考案者本人も議論を仲裁する形で潔く身を引いた。
その後、「Inject 2.0」を投票する場合は特定のトリック名を記述することとしたが、案の定、そんなややこしい方法にすんなり順応することはなく、二番手として名前が挙がっていた「The Gift」に投票が集中する形となった。