一時期、マジック用のアプリが流行ったようだが、それらに共通していた問題はおそらく「そのアプリがスゲェ!」という反応だと思う。
古い言葉に「マジックの不思議さは演者本人から感じるものであって、使っている道具から感じさせてはならない」みたいな格言があるが、この種のマジックはその性質上、そうした問題に直面しやすいことと思う。
ところが、実際は考え方次第で、他の(プリインストールされているような)アプリと同化させてしまえば、現象の不思議さはスマホではなく、演者本人に収束する。
今回の場合なら、プリインストールされた「アルバム機能」を使ってね。
「PhotoPrediction」レビュー
タイトルどおり、「PhotoPrediction」とは、スマホ版のインビジブルデックだ。
厳密には、他の場所に保存された写真を好きに取り出すことができるため、カードだけでなく、ありとあらゆるアウトを事前に設定することができる。
しかも、一度に取り出すことのできる写真は最大なんと129パターン!
アルバムには一番最近撮った写真として一番下に表示されるだけなので、日本語対応かどうかは関係なく運用できる。
それどころか、設定次第では、ちょうど1年前から保存されていた写真として見せられるし、撮影日時そのものを分刻みで手軽に設定し直すこともできる。
(インビジブルデックでたまに聞く「昨日、夢で見た~」みたいな口上を好き勝手に加えることも可能)
メンタルマジックでは、マルチプルアウトが複数要求される作品がいくつかあるが、これはスワミギミックやリーディングよりも現実的なアウト候補としてアリだと思う(笑)
とはいえ、英語に苦手意識がある人は最初の初期設定でいまいち使い方がわからない可能性があるが、以下で列挙される「その他のメリット」「デメリット」に目を通せば、ある程度は理解の助けになると思う。
その他のメリット
・デフォルトでトランプ52枚分がテーブル上で撮影された写真が保存されているため、必ずしも1枚1枚自分で撮る必要はない
・アプリを起動した状態でスリープモードにしても使える
・トレーニングモードあり
・アプリからアルバムに転送された写真や、アルバムからアプリへインポートした写真は後でアルバム内で削除しても、アプリ内に残り続ける
・確認したところ、今回のアプリは「iOS11」で動かなくなるとされている32ビットアプリではない
デメリット
・起動時、画面を右に2回スクロールする必要があり、最低でも3ページに渡ってホーム画面にアプリが埋め尽くされてる人向け
・フォルダ内から直接アプリを起動できない
・ホーム画面が自由に設定できない。機能上、iPhone端末に固定壁紙として登録されているような「単色カラー」か「淡い色が層になったオーロラ画像」でなくてはならない。アプリ側から完全に指定されるわけではないが、スマホのホーム画面が周りに周知されてる人には不便に感じる
・少し覚えることがある。「機械系=誰でも即行できる」っていう強い先入観がある人には若干ハードルを感じるかも?
総評
自分のスタイルや見せる相手との関係性を考えると、従来のマジック用のアプリでは「そのアプリがスゴイ」「そのスマホがスゴイ」と突っ込まれて即終了だった。
だが、こちらは何かしらのアプリを使っているとは思われない。ただ事前に撮っていた写真を見せているだけ。故に、普通に予言を見せるのと変わらない不思議さを与えると同時に、よりカジュアルな感じになる。
繰り返すようにプリインストールされたアプリと同化させて、日常生活に根差した自然さを強調したのには最初感心させられた。
似たものだとカメラや電卓、あるいは「Wiki book Test」くらいしか思いつかないが、もしかしたらGoogleマップ(読心術)やストップウォッチ(偶然の一致)、SNSのハッシュタグ(予言)など案外出てきそうではある。
ただし、この手のアプリはマジックショップを通して情報が流れてくることはないため、中々知る術がない。(数年前に流行ったと思しき、お絵かきアプリ「iForce」も最初は日本のテレビで演じられたりして広まったようだし)
それを見越して、今後どこかのマジックショップが日本語解説書とか売り始めたら面白いんだが。
(中身だけ知りたい人にはウケるだろうし、本家でもないのに「アプリを買った人だけのサービス~」とかまた意味の分からないことを言い出したら、それはそれで面白い。取扱説明書に著作権はかからないし、アプリの使い方を説明するだけでならいいだろうと、どこかで納得する奴も出てくるかもしれない)
似たコンセプトのアプリ
「PhotoPrediction」はiOS限定だが、Androidで「Foto Prediction」という似た機能のアプリがある。
手持ちにAndroid端末がないため、PCでエミュレータ起動した限りでは…
・トランプ52枚分の写真はデフォルトで設定されていないため、事前に用意する必要がある。
・原理は「Photo Prediction」とほぼ同じで、こちらよりも操作が1回分少ない。
・ダミーのアイコンで「Document」と表示される。
なお、Androidの方が半額である理由は元々「PhotoPrediction」の配信当時の価格が4.99ドルだったことに関係している。応用無限って部分を考えれば、1200円でも高いとは別に感じないけど。
K52が開発したアプリ「AnyCard」
こちらは2017年春に配信された比較的最近のアプリ(iOSとAndroidあり)で、好きなカードがスマホの画面いっぱいに映し出すことができる。(インビジブルデックとはまた違った趣向になるけれど)
ANYCARD | Official Commercial – K52 | YouTube
当然ながら「PhotoPrediction」と違って、タップ1つで連続で別のカードを表示することもできる。また、YouTube上には見せ方に関するアイデア動画がいくつも投稿されているようだ。
ちなみに、私は本記事を書き上げた後にこのアプリの存在を知ったため、関連アプリの紹介云々で色々と狼狽えていたところ、それを見かねたジャンさんが簡単にレビューをしてくれた。
[JEAN] レビュー:AnyCard(アプリ) | Trick and Mind