2017年9月、マジシャンがコカ・コーラをコカ・コーラ ゼロに変えてしまう新CMの放送がスタートした。
「コカ・コーラ」ハロウィンキャンペーン2017 9月11日(月)から全国でスタート! | コカ・コーラサイト
https://www.cocacola.co.jp/press-center/news-20170907-14
にぎやかなカフェが新CMの舞台です。ウェイターがテーブルに「コカ・コーラ」を運んでくると、注文した女性が「コカ・コーラ ゼロ」を頼んだはずと言います。しかしウェイターはあわてず、「コカ・コーラ」ロゴのレッドディスクのコースターを取り出し、「コカ・コーラ」のボトルに近づけて回します。
すると「コカ・コーラ」の特別なおいしさはそのままにゼロシュガー、ゼロカロリーの「コカ・コーラ ゼロ」にボトルが一瞬で早変わり。女性たちは驚くばかりです。実はこのウェイターは、アメリカの有名なマジシャンであるJustin Flom(ジャスティン・フロム)さん。撮影でCGは一切使っていません。
説明のとおり、このCMにはCGは使われていない。その証拠を示すかのごとく、CMに出演していたジャスティン・フロム本人が自身のYouTubeチャンネルにて同様のマジックを披露している。
Magicians do CAMERA TRICKS! | YouTube
元々、このCMは2016年から世界各国で放送されていたもので、今回ようやく日本語吹替版(15秒の短縮版のみ)が登場した。
フルバージョンはこちら
今回起用されたジャスティン・フロムとは?
日本では、内輪で讃美されるような目立った功績がないため、知名度が低い傾向にあると思う。
だが、彼が以前に「カード・アーティストリー」というデックをスライドさせると、モナリザの予言絵画や脳内イメージ写真が出現する作品を発表した人物と言えば、何かピンと来るだろうか。
特筆すべき点としては、やはりSNSで誰かとシェアしたくなるようなマジック動画を定期的にアップしていることだろう。少し前には自身の娘をボックスも何もなしに人体切断に挑戦したマジックで大きな注目を浴びていた。
このほかにも、コーンフロスティとタイアップを組んだプロモーション動画を複数公開している様。せっかくなので、これを機にマジックを取り入れた各国のプロモーション動画について少し調べてみた。
◆ストックホルムの魅力を伝えるストーリーテリングマジック
なんとなく見覚えがあると思うが、この種のマジックはストーリーテリングデック(Storytelling Deck or Story Deck)と呼ばれ、演者が語るストーリーに合わせて、デックからカードをめくると、「セリフの一部」と「カード名の読みの一部」が一致していくというものだ。
日本でいえば、KiLaの「バーテンダー136」がまさにそう。
時にはビル・マローン(Bill Malone)が1988年に発表した「サム・ザ・ベルホップ」(Sam, the Bellhop)を同義語として用いられることもある。
動画では、スウェーデン出身のマジシャンであるチャーリー・ケイパー(Charlie Caper)が華麗なカードさばきを交えて、首都ストックホルムにまつわる情報を絶え間なく教えてくれる。
ストックホルムは欧州で最も急成長中の街です。
世界経済で中心的役割を果たす27都市を比べた最新調査でも、知的資本とイノベーションではストックホルムがNo.1。起業環境もNo.1。健康・安全・治安もNo.1。
つまり、ストックホルムに人が引っ越してくるのは…偶然じゃないんですよ。
動画の詳しい日本語訳はコチラに掲載されている。
カードさばきに惚れます。ストックホルムは世界最高の街だと説くマジシャン | ギズモード
◆さりげなく水資源の大切さを訴える英国俳優のマジック動画
思い返してみれば、昨年10月にファッション誌「Vanity Fair」のキャンペーン動画に登場したベネディクト・カンバーバッチのアレもプロモーションの一種に属していた。これはこれで当時、カンバーバッチの主演映画「ドクター・ストレンジ」の公開と相まって、注目を集めていた。
ベネディクト・カンバーバッチがキャンペーン動画でマジックを披露 | News: MAGIC MORE
これは言い換えれば、マジックを取り入れるからといって、必ずしもマジシャンを先頭に立たせる必要がないことを示した好例ともいえる。
しかも、9月16日にはトーク番組では、司会者が「ネットで君がマジックを見せていたんだけど」と切り出して、同様のマジックを披露していたし、今後彼の十八番となりうるのだろうか?(笑)
◆クレジットカードとカーディストリーと手品を少々…
株式会社JALカードがWEB限定で公開したこの動画はカーディストリーの立役者であるザック・ミューラー(Zach Mueller)を迎え、クレジットカード1枚、時には2枚でだけで、まるで生き物のようにカードが踊り動く姿を捉えている。
しかも、この映像にはカーディストリーに見惚れて気付かなかったんだろうと言わんばかりに、実はそれぞれの場面で日本人マジシャンのK-SUKEが映像脇でマジックをしているという仕掛けが施されていた。
当時、「カーディストリー」という名前すらあまりネットで取り上げられていなかったせいか、日本発上陸と大々的に銘打ち、各メディアサイトで取り上げられていた。
詰まるところ、コカ・コーラ以外は総じてどれもがWEB限定で公開されたものだった。裏を返せば、マジックを取り入れるということは、何かしらのバブリシティを狙っていると考えていいのかもしれない。
あるいは、テレビCMでは、ゲリラ型の構成でないとそれがマジでやってるというのが伝わりにくそうにもある。マジックを「活かしている」というよりかは「モチーフにしている」と捉えられる危険性が孕んでいるのかもしれない。