数年前、「オンライン教育サービス」という言葉が世間を賑わせた。スマホの普及に伴い、インターネットに接続できる環境であれば、自宅や外出先などどこにいても好きな時間に受講できるのが魅力となり、日本でも似通った事業が進出。特に海外では、高額な授業料ゆえに教育を受けられない貧困層の存在や学生ローンの負債問題を背景に当時大きな注目を集めた。
興味深いことに、マジックもこれと似た性質にあると思う。お高いDVDやら本やらで、そう易々とのめり込める分野でないのは確かだ。それもマジックが好きな友人が近くいなければ、なおさら右も左もわからない世界が広がっている。
こう考えてみると、マジックの世界にもオンライン動画サービスがあれば、それはそれである程度は成立しそうな気がする。
そして実際、そうした考えを視野に入れたYouTubeチャンネルが多々あるのだから面白い。
例えば、「52 Kards」は次世代のマジシャンたちへの新たな成育環境の提供をコンセプトに、2011年に立ち上がった学習プラットフォームだ。
現在では、ショップを立ち上げたり、デックをプロデュースしたり、専用アプリを配布したり…。英語圏だからこそ成立しうる戦略とも考えられるが、更新頻度はあまり芳しくなく、また再生回数から見るにけっして成功しているとは言いがたい気も。
それならまだマジシャンのクリス・ラムゼイの公式チャンネルの方がいい。
ただし、こちらは英語が聞き取れない人にとっては、かなり動画を選ぶ。手順だけ知りたい人は確実につまずくと思う。
そこで、今回はマジックを学ぶ第一歩に最適なYouTubeチャンネルを3つ紹介しよう。
The Russian Genius
◆TheRussianGenius YOUTUBE CHANNEL
主にカードマジックの技法を解説してくれるチャンネル。「Russian」と言っても、解説は英語。
他のチャンネルと大きく違う点はカメラの向きが見る人と同じ視点で解説してくれるということ。
その他多くの解説動画では、カメラの正面に向かって解説している。もちろん、セルフワーキング系のマジックではそれでも構わないのだが、何らかのテクニックを要する際にはこれだと見ている人に若干の負荷がかかる。その点、同チャンネルでは、少なくともカメラの正面に立つときは決まって実演時に限るというかなり良心的なチャンネルといえる。
Mismag822
◆Mismag822 – The Card Trick Teacher YOUTUBE CHANNEL
数理トリックや技法をあまり使わないカードマジックを主に解説くれるチャンネル。
300以上ある動画の中で、セルフワーキングがだいたい4割を占めており、他の解説動画と比較して、これはかなり数が多いというのが特徴。動画自体は簡潔で見やすく、ある意味無駄なものをすべて削ぎ落とした極地という感じ。
(他の動画でもそうだが、技法についてはしっかりとその技法名が明記されているにもかかわらず、数理トリックに関してはその原理名についてあまり触れられていないのが少々残念ではある)
Scam School
こちらは私の一番お気に入りのチャンネル!!
マジシャンのブライアン・ブラッシュウッドが誰でも簡単にできるマジックはもちろん、バーベットや犯罪まがいのライフハックなども解説してくれる。
同チャンネルのクオリティはもはや動画というよりネット番組の域で、よくある1つの固定カメラで延々ワンカットで臨む解説動画とは格が違う。
それゆえ、流れとしては、主にブライアン本人が実演⇒解説⇒観客役の一般人でも同じことができるよう再現という形式で進むことが多い。
おそらく、対象となる視聴者層は手品に興味のある若者だけでなく、より幅広い層をターゲットにしているからだろう。それこそマジックや脳トレを話のネタとして調べあさる一般人に向けてコンテンツを提供しているかのように。(まあ、それが一番成功しやすそうだが…)
現に、同名番組である「Scam School」は2008年と2009年に「iTunes Top Video Podcast」に選ばれ、さらに2016年には「People’s Choice Podcast Award for Education」にも選ばれている。
マジック動画を探す方法
最後に、日本からも何か1つ紹介しておくべきだろうか…。
いやはや、YouTubeの検索窓に日本語で何かマジック関連のワードを打ち込むってことはめったにない。私は特別何か英語が聞き取れるとかそういうわけでもなんでもないのにだ。
私がずっと国産のマジック動画を避けてきた理由はあまりに素人感丸出しの動画が多すぎるせいだ。さも自分用にメモとして撮っておきましたとでも言いたげな動画。時にはハリのない声で延々と説明し、聞いているだけで怒りがこみあげてくることもしばしば…。そりゃあ、もう見るだけでやる気が失せてくる。少なくとも、私が調べようとした5年以内の出来事だから、今では若干改善されているようだがね。
当時はあえてそういう動画をあげることによって、マジック人口を引き下げる何かの陰謀かと思ったくらいだ(笑)
ちなみに、今回は主にYouTubeのチャンネルをメインに紹介したが、何かわからない技法や現象などがあったときにも英語で調べてみると、かなりの頻度でヒットする。
英語が不得意な人間があえて英語で調べようとするなんて、日常の中ではあまり起こりえない出来事かもしれないが、ぜひともやってみてほしい。仮にスペルがわからなかったとしても、発音からなんとなく似た単語を2, 3回打ち込めば、グーグルがちゃんと仕事をしてくれるはずだ。
まあ、とにかくマジック動画を探すということに関して、動画サイトではある程度ながらスクリーニングすることができるようだ。
マジック-トピック | YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCXeV0K8xayLV8rS5iqTfrqw/featured
こちらでは、YouTubeの動画検出システムによって自動生成された一トピックで、チャンネル登録も可能。現在進行形で再生回数を稼いでいるマジック関連の動画を俯瞰して見れるのは中々良い。
実演動画だけでなく、タネ明かし系の動画もちょこまかと乱立しているあたりが特に興味深く、ある意味どんどん知識が増えていくはずだ(笑)
【関連記事】