成功した職業マジシャンに共通する「7つの習慣」


長年に渡り、「Merchant of Magic」の創業者であるドミニク・レイエスは数々のクロースアップマジシャンたちと仕事する中であることに気がついた。それは、職業マジシャンとして成功している彼らにはある共通点があったのだ。彼はこの共通点を「習慣」として、もっと多くの人が取り入れるべきだと考えている。

では、成功しているクロースアップマジシャンたちに最もよく見られる7つの習慣とは何なのだろうか?

The 7 Habits of Highly Successful Close Up Magicians | Merchant of Magic
http://blog.magicshop.co.uk/2013/11/7-habits-successful-close-up-magicians.html

第1の習慣:観客マネジメントに関心を向ける

観客をコントロールし、正しく指示することはとても重要なことだ。成功しているマジシャンたちは注意を巧みに操り、関心を高め、観客らをグループ単位でコントロールする術を学ぶのに余念がない。

彼らはマジックの本を読むのと同じくらい時間をかけては、訪問販売やショーマンシップに関する本を読みあさっている。それも、他のマジックと同様、友人ら一緒に観客のマネジメントについて議論を交わし、実践でうまくいったものはしっかりとメモしておく。

実際、観客たちとの関係を築くのにマジックをするのと同じくらい時間を割く人もまた多い。こうすることで、パフォーマンス中に観客の1人がいきなり何か質問をしてきたとしても、躊躇わずに対応することができるようになる。場合によっては、相手の行動を事前に予測していたかのようなスマートな受け答えができるようになるかもしれない。

第2の習慣:時間に余裕を持つ

もし良い評判を築き上げたいのだとしたら、まずは時間通りに行動することだ。現場には早めに到着し、会場をチェックしたり、クライアントやイベントのスタッフに挨拶したりと色々とやることがある。もちろん、予期せぬ問題が起こった場合の対処として、余分に時間を設けておくことも考えておこう。

仮に午後8時の予約だとしたら、その1時間前には現地に到着しておかなくてならない。

たとえ予期せぬ問題が起こらなかったとしても、長い時間、そこで過ごすことはそれだけ有益なことでもある。例えば、リラックスしながら道具を用意して、気づいたころにはすっかり現場の雰囲気に慣れて自分のものにしているって状況はまさに最高のシチュエーションといえるだろう。

第3の習慣:ポケットマネジメントを徹底する

さて、あなたは初仕事がどんなだったか覚えているだろうか?

私の場合、必要以上に道具を持ち歩き、仕事が終わったころにはつい笑ってしまっていたことを覚えている。当時、私が準備してきた道具のうち、たった2割ほどしか実際には使われなかった。それどころか、残りの8割が逆に邪魔にさえ思えて、とてもやりにくかったことを覚えてる。

成功しているマジシャンたちは各現場ごとに必要なものを正確に把握し、ポケットマネジメントを合理化することに従事している。彼らに共通していえるのはその多くがルーティンの中で、リセットできるように計算していることだ。

これによって、パフォーマンスはより自然になり、まるでこなれた感じに(努力もせずにやってのけているかのように)見せることができる。

第4の習慣:場の雰囲気を察する

やり手のマジシャンたちはグループへの入りどきや撤退するべき頃合いをよく理解している。彼らはグループ間の会話にマンネリが生じていたりする瞬間を探し出すことに長け、けっしてゲストたちの自慢話や笑い話に割って入っていくようなマネはしない。

また、マジックのやめどきを見計らうことは、あなたがこれからどんなマジックをやるのかと同じくらい重要なことだ。

マジシャンとしての仕事はそのグループを楽しませるものであって、イベントそのものに取って代わることではない。大切なのは相手が求めるがままに行うことだ。たとえ他のグループにお呼ばれしても、また後で戻ってくることを約束するようにしよう。

第5の習慣:会場を把握する

クロースアップマジシャンはステージを使わないため、現象を肌で感じてもらうことができる。

とはいえ、ステージがないということは各現場ごとに自分のコントロールが及ばないことがままあるということでもある。

成功しているマジシャンの中には、パフォーマンスを行う前にあらかじめ会場を偵察しておく者がいる。彼はそこで会場の盲点となる場所や各テーブルごとの通り道などを把握しておく。これはショーを通して会場全体を回り、誰もがマジックの存在を知り得たことを確認するためだ現代のコメディアンがステージを上がったり下がったりする理由の1つに、動くことで人々の注目を集めることを狙っている。これもまた同じことだ。

第6の習慣:シンプル・イズ・ベスト

マジックには2種類ある。それは一般向けとマニア向けのマジックだ。

この2つの違いは「現象が単純かどうか」にある。成功したマジシャンは自分たちが行うマジックが如何にわかりやすいかを常に考えている。ごく一般的な原則にこんなものがある。「簡単な一文で説明できるマジックでなければならない」

ウォークアラウンド系のマジックを見るためにはそれなりの努力が必要だ。努力が必要ということは観客を疲れさせることに繋がる。もちろん、これは、マジシャンは複雑なマジックをするべきではないと言っているわけではない。あくまで、プレゼンテーションの面では、複雑さを最小限にするべきだ。

なぜなら、マジックに複雑さが足されている時点で、観客の思考が既にそれで一杯になっているからだ。

わかりやすい例として、ダレン・ブラウンが挙げられる。彼が行うプレゼンテーションの多くは重たい理論や概念を多分に含んでいる。ところが、現象をシンプルにすることで、人々は彼の言葉に耳を傾け、一切の負担を感じにくくなっている。

第7の習慣:タイミング

おそらく、これは最も見過ごされがちなスキルだ。

ポーズをとるタイミング、スピードを変えるタイミング、観客に笑顔を見せるタイミング…。

テクニックや原理に関しては、既に習得済みであろうとも、ほとんどのマジックでは、そうしたタイミングの話はそうそう扱われない。

タイミング云々の話は生の現場(=ライブ)を通して蓄積されていき、個々の暗黙知を共有することで紡がれる。これについては、舞台演劇に関する講座や本がたくさん出ている。勘違いしてはならないのは、このタイミングとは1つのトリックや1つのテクニックで習得されるのではなく、セリフや身体言語を含んだ一連のルーティンの中で形成されるということだ。


実は、このコラムは昨年12月に9割近く訳し終えていたものだ。ところが、最後の7つ目の習慣を読んだとき、あまりの内容の薄さに愕然とし、泣く泣くお蔵入りとなっていた。元々、このコラムのタイトルはスティーブン・コビーの「7つの習慣」にあやかっている。

きっと、それが今回の顛末を引き起こしたんだろう。(途中までは結構いいこと言ってんのに…)

そういえば、ハリソン・グリーンバウムも自身のコラムの中で似たようなことを言っていた。文面上では、伝わらなさそうだったので割愛したが、最後の5番目の項目にはこう綴られている。

「〈5〉という数字はまさに最高の数字だ。リストに数多くの項目がある場合、おそらく書き手はどこかに何か切りのいい数字を入れたいと思うはず。それこそ、タイトルに切りのいい数字をつけたいがために適当な項目を追加するかもしれない 」

コメディアンらしく、自身も〈5〉という数字をラストに持ってきているあたりが、なんとも面倒くさい奴だと、当時はそう思った。コメディマジシャンへの辛辣なコラムが最後には読者をニヤつかせる感じで終わらせたかったんだろう。

だが、話はそれだけで終わっている。

「マジックの世界にも自己啓発の謳い文句と似た毛色がある」「有識者たちは常に真実を語るわけではない」などと、如何にも的を得ているかのようなことを言ってくれれば、なお良かったのだが…。

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