ザ・コードとルークジャーメイのマークスマンデックの比較レビュー


※今回は私の友人でマジシャンであることを頑なに否定するジャンさんにレビューを書いてもらいました。


先週、ルーク・ジャーメイ考案の新しい?マークドシステムを搭載したデックが販売されました。

既にジャーメイがSNSで発言していますが、以前に「The Code」と呼ばれるアンディ・ナイマンが発表したマークドデックと似た部分があります。

これは別にパクったというわけではなく、これよりも更に前から存在していたあるデックが元になっているそうです。

両者ともに特定のカードが分かるのはもちろん、その1枚上のカード、さらにはデックから適当に取り上げたカードの枚数が分かるという共通点があります。

1枚上のカードが分かる原理についても情報が出回っているのでここに書いてしまいますが、スタック、つまりカードが特定の並びにセットされた状態のデックを利用することによって成り立っています。

この特定の並びとは、どちらもネモニカ・スタックと呼ばれるホアン・タマリッツが考案したメモライズドデックの並びになっています。

メモライズドデックについての解説は…適当に「ネモニカ」とググって頂ければ、「ネモニカ・ミラクルズ」というDVDの商品ページや私の以前書いていたブログが出てくるはずなので、そちらを参照して下さいm(_ _)m

ザックリ言ってしまうと、「メモライズド」(=memorized)という言葉から分かるように特定の順番で記憶されたデックということです。

ただし、この2つのマークドデックでは並びを記憶しておく必要はありません。2つともネモニカが採用されたのはカードを広げた時にランダムに見えて、尚且つよく使われているスタックだからという理由だと予想されます(考案者はどちらもネモニカ・スタックを記憶している可能性も)

The Codeでは特定のカードとその1枚上のカード、観客が適当に取り上げたカードの枚数(=特定のカードの上にトップから数えて何枚あるか)という3つの情報が読み取れるようになっています。

いますが…

はっきり言って、私を含めてネモニカ・スタックを完全に記憶している人には全く必要のない情報が2つもあります。

ネモニカを覚えていれば通常のマークドデックで全く同じことが出来ます。

相手の選んだカードの前後のカードが分かれば瞬時にそのカードが何か分かりますし、トップからボトムまでの並びを変えないのであれば、特定のカードから上にカードが何枚あるかなんてのも、カードを思い出すのと同じ速さで出来るわけです。

むしろ、カードの裏面にはスートの情報無しに1~52までの順番だけが書かれた方が使い勝手が良い可能性すらあります。

Marksman Deckの概要

では、Marksman Deckはどうなのでしょうか?

こちらはThe Codeよりも情報が多くあります。ショップの商品解説に何が出来るか書かれているのでそちらをまとめると、以下の通りです。

1.特定のカードのマークと数字が分かる
2.その上にあるカードのマークと数字が分かる
3.カットされたカードの枚数が分かる
4.特定のカードがスタックの中で何枚目にあるか分かる
5.メイトになるカードまでの枚数が分かる
6.カットより上のデックに赤いカードが何枚あるか分かる
7.カットより上の束のスート(数字)の合計値がわかる
8.カードの天地が分かるようになっている。

8つに分けて書いていますが、3と4は実質ほぼ同じ意味で、特定のカードの枚数目、その上のカードの枚数目の情報が別々に書かれているということです。

こちらもネモニカを完璧に記憶していれば、2~4の情報は必要ないんですよね…

個人的に新規性を感じたのは5~7で、これはネモニカを覚えていたとしても瞬時に判断するのは難しいですし、数字の合計に関しては覚えていたとしても計算する手間があるのでほぼ無理です。

赤いカードの枚数が分かる利点については、ジャーメイズ・マインド第2巻で紹介されている「ゼン・アプレンティス」の第1フェーズの手順がより楽に出来るというのがあります。

もっと言ってしまうと、Marksman Deck の解説ではなく、トレイラー映像で演じられていた現象はジャーメイズ・マインドの第2巻と3巻の原理とMarksman Deckを組み合わせたものとなっているものがありますし、むしろMarksman Deckでの解説だけでは不可能な現象が含まれています。

ここまで書いてから気が付きましたが、公開されている40分前後の実演トレイラーと解説DVDの実演は全く違うということを言い忘れていました。

解説DVDの方では基本的な原理を利用した基本的な演技と解説のみで、トレイラーの内容を再現するには別の知識が必要になる場合があります(解説DVDの説明だけでもある程度は再現出来ますが)。

The CodeとMarksman Deckの比較

比較と言っても機構が違うので比べられる部分はかなり少ないのですが…

2つのポイント、「マークの隠密性」と「読み取りやすさ」についての比較になります。

・マークの隠密性

マークドデックを使う上で最も気になる部分かと思います。読み取りやすさと隠密性はトレードオフの関係であることも皆様は理解されていると思います。

どちらも賛否両論あるレベルで読み取り易いのですが、圧倒的にThe Codeの方が隠密性が高いです。

というよりMarksman Deckは書き込みが多すぎますし、「隠密性とは?」という状態です。

1メートルくらい引いて見れば露見はしませんが、その距離でカードマジックをする状況をあまり想像できません。

このへんはハンドリングと演者の雰囲気で解決できなくはないものの、負担は大きいように感じます。

私がオフィスのスタッフ相手にやったルーティンではバレませんでしたが、机の上に置いた状態でいたら秒でマークドが露見しました。

解説ではジャーメイが「パーフェクトリー・ハイディング」と言っているのですけどね…

流石にちょっとそのセリフは信じがたく、画面を二度見してから少し巻き戻してもう一度聞いたくらいです。

その点、The Codeは情報量が少ないためか自然な形でバックのデザインに紛れ込んでいます。

一度分かってしまえば瞬時に読み取れますが、気が付かれるまではほぼ安心して使えるかと思います。

・読み取りやすさ

前述で既に読み取りやすさと隠密性はトレードオフだという事を書きましたが、ここで言う読み取りやすさは違うんですよ…

Marksman Deck がThe Codeよりも圧倒的に便利だと感じる部分の1つがここにあります。

The Codeはバックの左側にカードのマークと数字、右側に1枚上のカードのマークと数字、上部にトップから数えて何枚あるのかが書かれているわけですが、これって意外と読み取りにくいんですよね…

より正確に言うならドリブルした状態で使う分には困らないと言うべきかも知れません。

Marksman Deckではほとんどの情報が左側に1列で書かれているので(上下逆にしても左側になります)、スプレッドした状態でそのカードと隣のカードの情報が読み取れるようになっています。

これが便利なんですよ!

というのも、ネモニカを記憶している人ならわかると思いますが、観客がカードを引いたりしてカードの位置が入れ替わったりした場合、スタックの順番に戻すのが案外面倒だったりしますし、戻した後もスタックになっているか確認するのに若干手間を取る場合があります。

しかし、Marksman Deckでは裏向きにスプレッドした状態で1~52の数字が見えるので、スタックになっているかがフェイスを見るよりも早く確認することが出来ます。

The Codeではそうは行かず、順番があってるかどうかは1枚ずつ持ち上げないと分からないので並べるのもチェックするのもやや手間が掛かります。

The Codeでも解説にはありませんでしたが、右から左にスプレッドすれば色々と出来るようになってちょっと幸せになれますヽ(=´▽`=)ノ

これについては別の機会にどこかで紹介するかもしれません。

The Codeの優位性はマークが読み取りやすさの割にデザインに上手く隠れているという一点のみでしょう。繰り返しになりますが、The Codeに関してはネモニカを覚えていた場合、何も考えなくても次のカードが分かるという部分にしか利点がありません。

Marksman Deckはネモニカを記憶していない人はもちろん、記憶している人にもメリットがある点が良いと私は感じました。

Marksman Deckの解説DVDで、スタックについてはホアン・タマリッツの「ネモニカ・ミラクルズ」及び「Mnemonica」(洋書)が紹介されており、マークドデックの取扱いについてはボリス・ワイルドの「Transparency」(東京堂出版から「ボリス・ワイルド Transparency」というタイトルで出ている)が紹介されていました。

マークド+スタックという使い方は、私も自作のマークド(ボリスワイルドのアレンジ)を使ってやっていますが、非常に有用です。

The CodeもMarksman Deckも肝はマークドデックでありながら、スタックの原理を用いることでマークドの気配を消すことにあります。

Marksman Deckで単体のレビューを書きたいくらいですが、長くなりそうなので今回は似たようなコンセプトのあるThe Codeとの比較と簡単なレビューとなりました。

ジャン
蕎麦とチョコレートが好き。