【レビュー】The 52 to 1 Deck by ウェイン・フォックス


初回ロットが即刻売り切れたと話題の「The 52 to 1 Deck」についてレビューをしてみる。

ある程度ギミックを買い込んでいる人にはお気づきのとおり、本作では、マインドパワーデックが原理の中核にある。

(一部のショップでは、その事実をひた隠しにし、また一部ではそれがクレジットされていることを言及しているようだが)

しかし、一番よくわからないのは、もしマインドパワーデックの原理を使っているなら、あの商品動画には説明のつかない部分があるということ。

THE 52-1 DECK – OFFICIAL TRAILER | YouTube


そこで、この商品動画から伺えるセールスポイントと実際の整合性についてチェックしてみよう。

1. 観客に質問していない

通常、マインドパワーデックでは、カードを当てる際にいくつか質問をしなくてならない。

(それを省くために色んなマジシャンがアイデアを出しあっているわけだが)

この動画では、その部分が完全に編集されてしまっている…。

けれども、本作では、これまで既製品には(なぜか)なかった改良が加わり、手続きが短縮化されたのは事実だ。

2. 観客がカードを言う前に演者がデックをカットしている

言ってしまえば、本作は「マインドパワーデックの原理をもとに、心に思ったカードを観客に見せられるようにするにはどうすればいいか?」への解答だ。(表向きは前作「5221」の改良ってことみたいだけど)

マインドパワーデックを知っている人からすれば、この時点である程度は中身を推測できると思う。

加えて、なぜバイシクルのライダーバックなのに既製品よりも少し安いのか?

(既製品は税込4600~5400円なのに対して、「52 to 1 Deck」は税込4000~4300円に収まっている)

ここに気づけた人はそれもそれなりの理由があると言えば、納得できると思うし、「やっと出てきたか!」と喜んで、こちらに乗り換えるとも思う。

3. 観客自身がカットして当てることもできる

問題は商品動画の2分33秒にある観客が自分の手でデックを取り上げた場合の当て方。

実のところ、これはラッキーパターンにおける演出だ。でも、完全なギミックで処理されているわけではないため、実際にそうした状況に立ったとしても、人によって実践するのは怖いと思う。

解説では、他の見せ方として「2人同時に当てる方法」「大きな会場で行う方法」「記憶術のように見せる方法」が解説されているものの、どれも新奇性に乏しいといえば乏しい。

(「これを使った手順を今から5つ考えろ!」と無茶ぶりされても同様の答えに辿りつくレベル)

ダレン・ブラウンを引き合いに出したくはないが、「Smoke」のようにもっと考えられたのでは?という意味で、若干おしい。

とはいえ、既製品よりも最適化されたのを考えると、売りネタとしてでなく、今後これをずっと売り続けるのであれば、代替品として広めるつもりなのであれば、個人的には歓迎ムードではある。

(これまで「マインドパワーデック」っていうネーミングセンスの欠片もない名前にどことなく違和感を覚えていたが、今後はこのバージョンが広まってくれれば…な~んて一瞬思ったものの、「フィフティトゥー・トゥ・ワンデック」ってのも長いし、言いにくいか…笑)

【総評】

このレビューを読まずにデックを買えば、落胆するのは間違いない。打ちのめされ、何も考えずにお蔵入りする可能性すらある。

だが、既製品を使うことに若干の引け目を感じている人、あるいはこれを読んでマインドパワーデックが何か知りたいって人には朗報だろう。

なお、複数の海外ショップの情報によれば、セカンドロットが入荷されるのは11月中旬とのこと。

11月20日追記:何があったのか、セカンドロットの入荷は1ヶ月繰り下げて12月中旬とのこと。