レクチャーノートはマジック業界独特の商品形態の1つでありながら、なぜかその手のガイドラインが本業界にはどこにもない。2014年から毎年「マジックマーケット」(リンク)が行われるようになり、レクチャーノートの作成方法を知りたいと思う人がより増えてきそうな予感がするので、私の経験を挟みつつ、ここにまとめておこう。
1. 冊子のサイズ
一般的にレクチャーノートのサイズには小A5、B5、A4の3種類に分けられる。大きさはA5<B5<A4の順に大きくなっていき、レクチャーノートの多くがA5とB5に二分される。
では、それぞれどのような大きさで、どんなものに使われているのだろうか。
A5: ハードカバーの本
新沼研の作品はまさにこのタイプで、A4サイズの紙(コピー用紙)をちょうど半分にした大きさでもある。東京堂出版の手品本もそのほとんどがA5サイズとなっている。
B5: 少年ジャンプ、大学ノート
私の経験上、レクチャーノートといえば、B5が多い印象で、いかにもな雰囲気が漂う。有名どころでいえば、紀良京佑の「紀良システム」やギャリー・カーツの「リーディング・ウィズ・ユア・ヘッド」(マジックハウス発行のレクチャーノートはほぼB5)、さらには今はなき「ザ・マジック」もこれにあたる。
A4: コピー用紙
こちらも多いといえば多いA4のレクチャーノート。でも、こちらはレクチャーノートとしてはやや大きい印象。例えば、森司(KitCut)の「SCAM」や北原禎人の「The Surgical」や「The Essential」等がこれにあたる。
2. 中綴じ?無線綴じ?
冊子の製本には「中綴じ」(なかとじ)と「無線綴じ」(むせんとじ)の2つ方法がある。
・中綴じとは、下記の写真のように冊子の真ん中のページにホッチキスが差し込まれた製本方法をいう。
長所:ノートを開いたままにすることができるため、両手にトランプを持ちながら、ハンズフリーで読み薦めることができる。そのため、作品集や自作ギミックの解説書などに向いている。
短所:製本の構造上、対応可能なページ数には上限(64ページ)があり、またページ数が多ければ多いほど冊子を閉じるときにページ中央がぷっくりと膨れ、見た目が悪くなる。
・無線綴じとは、一般書籍のように背部にのりを用いた製本方法をいう。
長所:ページ数が多いものでも製本することができ、強度も高い。
短所:中綴じと違い、ハンズフリーの状態で冊子を読むことができない。そのため、演技理論の解説などに向いている。
3. 用紙の種類を確認する方法
冊子を注文する時、表紙や本文に使う用紙を自由に選択することができ、それによって冊子印刷の価格が大きく異なってくる。だが、用紙に関する専門的な知識がない中、イメージ写真と説明文だけで用紙の違いを頭の中で完全に再現し、区別することはかなり難しい。特に自分が愛読するレクチャーノートと同じ用紙を使いたいと思っている人も多いと思う(というか、最初はそっちの方が作りやすくていい)。
そんなときは印刷会社「ガップリ!」の無料でもらえる用紙見本帳を使おう!
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このサイトでは、会員登録することもなく、無料で用紙の種類を確認できる「用紙見本帳」を手に入れることができる。実物が下の写真。
収録される紙の種類は全部で47種類もあり、それぞれの色や質感、手触りなどを確認することができる。
しかも、それぞれの用紙には共通したサンプル写真が挿入されており、用紙によって写真の見え方がどう変わるかも正確に知ることができるからありがたい!
4. カラーにしたいけど、単価が高い!
被写体の関係上、モノクロ印刷では、どうも見えにくく、仕方なくカラー印刷にしなければならないことがある。こんなときに問題になってくるのがモノクロ印刷に比べて、カラー印刷にかかるコストが倍近くになるということだ。
多くの印刷会社では、モノクロ印刷とカラー印刷の2択であり、その中間はないように思える。だが、一部の印刷会社では、モノクロ印刷の中に一部のページだけカラー印刷することができる、「カラーモノクロ印刷」というサービスが設けられている。
特に「ちょ古っ都製本工房」では、約2週間前から事前に注文しておけば、その分だけ価格が格段に安くなるばかりか、指定のアップローダーを使えば、さらに5%割引される(事前に会員登録する必要あり)。
5. 結局のところ、どこの印刷会社がいいのか?
まず第一に言えることは「大手だから良い」「大手だから安い」というのは間違いだということ。大量に発注するのなら良いのかもしれないけれど、マジックのレクチャーノートは小部数が基本。そのため、同人誌や学会の刊行誌などをメインしているような小さな会社の方が小部数に見合った低価格で注文することができる。また、サイトによって、中綴じだけ変に安かったり高かったりと価格がまちまちで、自分が行いたい印刷方法で最も安いところを探すのがポイント。
ちなみに、価格帯の隔たり以外にも、前述のカラーモノクロ印刷のようにその印刷会社独自の特色もある。例えば、「印刷のウエーブ」や「プリントパック」では、会員登録をするだけで、初回から実質1000円オフで注文することができる。
美容院では、よくリピーターを集める目的で最初だけ安くする手法が取り入れられるが、レクチャーノートの発行がそう頻繁にないことを考慮に入れると、注文する度にサイトを変えるのもアリかもしれない(笑)
よって、私のオススメは…
・中綴じなら:プリントパック
・無線綴じなら:ちょ古っ都製本工房
もちろん、これ以外にも安くキレイに印刷してくれるところがあるかもしれないが、上記の2社を基準に自分なりに探してみてもいいだろう(もしそんなところがあったら、ぜひとも教えてほしい笑)
最後に、私はまだマジックマーケットに足を踏み入れたことがないため、現物を見たことはないのだが、どうやら現地はコピー本なるものが散見されるようだ。コピー本とは、印刷会社を通さずに自宅の印刷機を使って作成されたお手製の冊子をいう。確かに作り手としては、手頃でそういった場だからこそ許される代物に思えるが、買い手としてはどう思うのやら。もし内容が貧相なら、こんなものかと思うだろうけど、もしその人にとって、ずっと取っておきたいような内容だとしたら、彼らはどう思うだろね。