毎年ある時期になると、カナダのケベックシティーの市内に「The Quebec City Magic Festival」が企画したユニークなプロモーションが現れる。
マジックフェスならではのその独特なプロモーションには毎年日本でも各メディアサイトで取り上げられるほど。
例えば、2012年には街中で次のようなドッキリを仕掛けられた。
動画は市内のとあるショーウィンドウに6枚の大型モニターを設置するところから始まる。
そのうち、両端の4枚のモニターは現在の様子がリアルタイムで映し出されるようにしておく。
そして、中央にある2枚のモニターには事前に撮影していた録画映像が流れるように準備。
本番はここから。ベビーカーを押す仕掛け人の女性がダミーの映像が映し出される中央のモニターの前に立ち止まり、事前に録画していた映像と全く同じ動きをする。
そこに何も知らない一般人が通りすがると、左から2枚目までのモニターにはちゃんと自分の姿が映るのに真ん中辺りまで来ると突如消え、5、6枚目のモニターに差し掛かると、再び自分の姿が映し出されるという仕組み。
これにより、自分の存在だけが映像から消えてしまうという不思議な感覚に陥る。
この映像トリックに気づいた人にはショーウィンドウの前を通り過ぎたところで、マジックフェスティバルのパンフレットを手渡し、ネタばらしとなる。
これ以外にも、2016年にはポスターの中を瞬間移動する謎のマジシャンが大胆なイベント告知を仕掛けることもあった。
バス停の端にステッキが設置された謎の掲示板。白枠の中にはフランス語で「魔法の杖でここを叩いてください」と書かれている。
1人の女性が実際に叩いてみると、中からタキシード姿の男性が現れ、「ぜひケベックシティー・マジックフェスティバルにお越しください」とだけ言って、再び壁の中へ。(以下のGIF画像はタップorクリックすれば止まります)
「なんだ、これだけか」と、女性がそのまま立ち去ろうとすると、わずか1秒で背後の柱の中に瞬間移動し、「言い忘れていましたが、開催日は9月4日~6日です」と再度通告。
これで終わりかと思いきや、今度はポスターの中から同じ男性が現れ、「そういえば、無料のチケットをあげるのを忘れてました」とチケットを差し出すという三連続の瞬間移動を活かしたプロモーション。
そして、今年は「The Mind-Reading Billboard」と題したこれまた不思議な体験型プロモーションが登場。
バス停に設置された等身大のスクリーンに近づくと、「1枚のカードを心の中で選ぶように」とのメッセージが表示され、おもむろに18枚のカードが映し出される。
確認ボタンすらもなく、急に画面が切り替わったと思ったら「あなたが選んだカードはこれですね」というメッセージとともに、ハートの5を一発表示。
これには女性も笑みがこぼれる。
一瞬、何らかのフォースではないかと疑いそうになるが、別の人がチャレンジした場面を見ると、今度は別のカード(ハートの7)が表示され、仮説は即時棄却…。
一切の質問や手続きを踏まず、それこそダイレクトに人々の考えを次々に言い当てていく。
さて、一体どうやったのか?実は、この大型スクリーンの中には人間の視線を追うアイトラッキングが内蔵されていて、スクリーンの前に立っている人が今どこを見ているのかをコンピュータ上で自動的に追尾することができる。
つまり、縦横かつ等間隔に並んだ18枚のカードの中から1枚のカードを選ぶように迫られたとき、人間は必ずどこか一方向(特定のカード)に注意を傾ける。
その際、スクリーンの背後に備え付けられた専用のカメラで、人間の目の動きを追尾し、最も見つめていた時間の長かったカードをコンピュータがはじき出していたというわけ。
このように過去に話題になったプロモーション事例を紐解いていくと、中々大掛かりなものが多い印象だが、中にはひとひとねり加えた受動型広告もあった。
例えば、シルクハットが描かれた何の主張もない質素なポスターを街の至る所に設置。
ポスターの下部に目を向けてみると、そこには「カメラのフラッシュをオンにして、ポスターを撮ってみて!」という言葉が。
その言葉どおり、実際に撮ってみると…。
スマホの画面上にシルクハットからウサギが登場。しかも、ウサギの体にはマジックフェスの開催日が埋め込まれており、ここでようやくこれがマジックフェスの企画だとわかる。
また、ウサギ以外にもハトなどの種類があり、中でも植物の絵が描かれた写真を入手した場合、現地で無料チケットと交換することができる仕組みとなっている。
「これなら日本でも取り入れられそうじゃないか!」と、一瞬そんな考えが頭をよぎるところだが、実際日本で一般人とそうではない者が相対したマジックフェスなんてほぼ無に等しいんじゃないか?
というのも、一般人の受け入れを積極的に行うマジックフェスそのものがかなり珍しいように思う。そりゃあ、今回のカナダの場合、ホームページを見てもわかる通り、多くのスポンサーが付いていて、元々パブリシティを起こすことを前提にやってる感がある。
そう考えると、トリックオブザイヤー(私の切なる願望)すらない日本もやはり協賛してくれるスポンサーさえいれば、もっと活動的になれるのだろうが…。
なお、今年のケベックシティーマジックフェスティバルは5月4日~7日にかけて開催され、一般参加は無料とのこと。(だから今回は無料チケットとかの配布がなかったのか!)
ただし、レクチャーなど、いちマジシャンとして出席する場合には110~300カナダドル分のチケットを申し込む仕組みとなっている。